2019 東京学芸大学 E類教育支援専攻 表現教育コース 小論文 模範解答
2019 東京学芸大学 E類教育支援専攻 表現教育コース 小論文 模範解答
問1
優れた商品でも自然と売れるわけではなく、その魅力を明確にし、宣伝や販売することが必要である。商品と同様に、美術やアートにおいても、作品の意味や価値を製作者自らが言葉で定義し、その魅力を広く観客に説明する必要がある。なぜなら、芸術作品は作品の意味や価値がわかりにくいことに加え、価値観が多様化したグローバルな世界では、良い作品であっても何の説明もなく展示していては、高いお金を払って購入する人はいないからだ。したがって、アーティストもグローバルマーケットで勝負する起業家として、作品という商品を売る姿勢が必要となる。その際、自分の作品を言語化することによって客観的に捉え、既存の芸術や文化の文脈やマーケットの中で自分の作品がどのような位置づけにあるのか、歴史的な視点で説明することが重要となる。(346字)
問2
課題文では、グローバルな環境において、アーティストも芸術作品について自ら言葉を尽くして、作品の意味や価値を鑑賞者に訴える必要があることが述べられている。このように言葉で芸術作品を価値づけすることの是非は、どのような点にあるだろうか。
たしかに、課題文でも述べられているように、わかりづらい現代アートのような作品について、作者が自ら言葉をもって説明することには意義があると考える。というのも、鑑賞者に作品の正しい理解を促し、その魅力を広く伝えることができると考えるからだ。また、作品が広く受容されたり、販売されることでアーティストの経済的な活動基盤が支えられるという意義もある。
しかし、芸術の意義を鑑みた場合、作品を言葉で価値づけることは、芸術作品そのものをいわば否定するような面もあると考える。なぜなら、芸術というものは、本質的に言語に還元されない事柄を多様な造形によってなんとか表現しようとする試みであるとも考えられるからだ。
たとえば、キュビスムの絵画は、視覚的に多様な角度から見られた事物の形が一つの絵画のなかにたたみ込まれている。こうした絵の魅力や歴史的な意義について、言葉を持って語ることがたしかに可能であろう。しかし、キュビスムの表現や試みが言葉に汲み尽くされるようなものではなく、実際にその絵を見ることによってしか得られない印象や鑑賞の興味があると考える。
それゆえ、言葉を尽くして作品を価値づけることは、芸術が表現しているものを言語に還元することになるため、芸術の試みを否定することにつながると言える。つまり、芸術作品が表現するものが言語によってすべて汲み尽くされてしまえば、芸術の意義はどこにあるのかと問われることになる。以上より、言葉で芸術作品を価値づけることは、芸術の意義に対して矛盾を孕んだ行為だと考える。(762字)
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