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大学入試の小論文の書き方・対策完全ガイド

大学入試の小論文とは?

大学入試の小論文とは、与えられた課題や文章、資料などをもとに、設問が何を求めているのかを正確に理解し、自分の主張を理由や根拠とともに論理的に説明する試験です。

総合型選抜・学校推薦型選抜をはじめとする大学入試では、課題文を読んで意見を論じる「課題文型」、グラフや統計などを読み取って考察する「資料分析型」、特定のテーマについて論じる「テーマ型」など、さまざまな形式の小論文が出題されます。

どの形式であっても重要なのは、たんに「自分の考えを書く」ことではありません。

課題文・資料を正確に読み取る

設問が何を求めているのかを理解する

何について論じるのかを決める

自分の主張を明確にする

その主張を理由・根拠・具体例によって説明する

という一連の思考が必要になります。

そのため、小論文は単なる「文章力の試験」ではありません。

読解力、思考力、論理力、知識、表現力などを総合的に問う試験だと考えることが重要です。

作文・感想文と小論文の違い

「文章を書く試験」という点では、小論文も作文や感想文も同じように見えるかもしれません。

しかし、両者には大きな違いがあります。

作文や感想文では、

「私はこう感じた」

「私はこういう経験をした」

「私はこう思った」

といった、自分自身の経験や感情を表現することが文章の中心になることがあります。

一方、小論文では、

「私はこう考える。なぜなら○○だからである」

というように、自分の主張について、その理由や根拠を示して説明することが必要です。

たとえば、

「私は食品ロスを減らすべきだと思います。」

と書いただけでは、小論文として十分とはいえません。

なぜ食品ロスを減らす必要があるのか。
現在どのような問題が起きているのか。
その原因は何なのか。
どのような対策が考えられるのか。
なぜその対策が有効だと考えるのか。

といったことを筋道立てて説明する必要があります。

つまり、

作文・感想文=「自分がどう感じたか」を表現する文章

に対して、

小論文=「自分が何を主張し、それをどのような理由・根拠によって説明できるか」を示す文章

と考えると分かりやすいでしょう。

もちろん、小論文でも自分自身の経験を具体例として用いることはあります。

しかし、その経験を書くこと自体が目的ではありません。自分の主張を支えるための根拠や具体例として、必要な範囲で経験を用いることが重要です。

したがって、小論文を書くときには、

「私はどう思うか」だけではなく、「なぜそう言えるのか」まで説明する

ことを常に意識する必要があります。

大学教員は小論文の何を評価しているのか

大学入試の小論文を読むのは、多くの場合、その大学・学部で教育や研究に携わる大学教員です。

では、大学教員は受験生の小論文から何を見ようとしているのでしょうか。

もちろん、評価基準は大学・学部や出題内容によって異なりますが、小論文では一般に、単なる文章表現の上手さだけではなく、「大学で学ぶために必要な力を持っているか」が問われます。

特に重要なのが、次のような力です。

① 課題文・資料を正確に読み取る力

課題文型小論文では、まず筆者の主張や論理を正確に理解する必要があります。

どれだけ文章が上手でも、課題文を読み違えていれば、設問に適切に答えることはできません。

資料分析型の場合も同様に、グラフや統計から何が読み取れるのかを正確に把握することが出発点になります。

② 設問に正しく答える力

小論文では「良いことを書けばよい」わけではありません。

大学側が設定した問いに対して、何を求められているのかを正確に理解し、その問いに答えることが必要です。

たとえば、「原因を説明しなさい」と問われているのに解決策ばかりを書いたり、「筆者の主張を踏まえて論じなさい」とあるのに課題文を無視して自分の意見だけを書いたりすれば、設問に答えたことにはなりません。

③ 自分の主張を明確にする力

小論文では、「何となく賛成」「どちらともいえない」と曖昧にするのではなく、設問に対する自分の立場や主張を明確にすることが重要です。

読み手が、

「この受験生は結局、何を主張しているのか」

を理解できる文章にする必要があります。

④ 理由・根拠を示して論理的に説明する力

主張だけでは小論文になりません。

「なぜそう考えるのか」

を説明する必要があります。

主張と理由、根拠、具体例が適切につながっているか。途中で論理が飛躍していないか。最初と最後で主張が矛盾していないか。こうした論理の一貫性も重要な評価ポイントになります。

⑤ テーマについて考えるための知識・問題意識

大学入試の小論文では、教育、環境、医療、福祉、経済、国際社会、科学技術、AI、少子高齢化など、学部・学科と関係するさまざまなテーマが出題されます。

そのため、文章を書く技術だけを練習していても、テーマについて考えるための知識がなければ、説得力のある主張や具体例を提示することが難しくなります。

普段から社会の出来事に関心を持ち、ニュースや新聞だけでなく、関連する書籍や資料などを通して知識を蓄えておくことも小論文対策の一つです。

⑥ 自分の考えを適切な文章で表現する力

もちろん、最終的には考えたことを文章として読み手に伝えなければなりません。

誤字脱字、文法、語彙、原稿用紙の使い方といった基本的な事項に加えて、一文が長すぎないか、主語と述語が対応しているか、段落が適切に分けられているか、読み手に意味が正確に伝わるかなども重要です。

ただし、文章表現だけを整えればよいわけではありません。

小論文では、

「何を書くか」=内容

「どのように論じるか」=論理・構成

そして

「どのように伝えるか」=文章表現

のすべてが必要になります。

大学入試の小論文は、単に「文章が上手な高校生」を選ぶための試験ではありません。

文章や資料を読み、問いを理解し、自分で考え、根拠を示しながら、その考えを他者に伝えることができるか。

こうした大学での学びにもつながる力を確認する試験だと考えると、小論文で何を対策すべきなのかが見えてきます。

次に、実際の小論文対策を始める際に最初に行うべき、「志望大学の過去問分析」について見ていきましょう。

小論文対策は何から始める?まず志望大学の過去問を確認する

「小論文対策を始めたいけれど、何から勉強すればよいのか分からない」という高校生は少なくありません。

小論文の参考書を買う。新聞を読む。頻出テーマについて勉強する。とりあえず800字の小論文を書いてみる――。

もちろん、こうした勉強にも意味はあります。

しかし、潜龍舎では、志望大学・学部がある程度決まっているのであれば、まずその大学・学部の過去問を確認することから小論文対策を始めます。

なぜなら、「大学入試の小論文」と一口にいっても、大学・学部によって出題内容が大きく異なるからです。

長い課題文を読ませる大学もあれば、グラフや統計資料を分析させる大学もあります。特定の社会問題について意見を求める大学もあれば、学部の専門分野に関する知識や思考を問う大学もあります。

文字数も400字程度の場合から1,000字を超える場合まであり、試験時間もさまざまです。

つまり、「小論文」という共通の試験があるのではなく、「○○大学○○学部の小論文」があると考えた方が、実際の入試対策には近いのです。

そのため潜龍舎では、一般的な「小論文の書き方」を漫然と練習するのではなく、まず志望大学の過去問を分析し、

「この大学は受験生に何を求めているのか」

を明らかにしたうえで対策を組み立てていきます。

試験時間・文字数を確認する

最初に確認したいのが、試験時間と文字数です。

例えば、同じ800字の小論文でも、

60分で800字を書く試験

と、

120分で長い課題文を読み、その内容を踏まえて800字を書く試験

では、必要となる力も時間配分もまったく異なります。

また、複数の設問があり、

問1:200字で要約
問2:300字で説明
問3:800字で自分の考えを論じる

というような形式になっている場合もあります。

この場合には、単に「800字の小論文を書く練習」をしているだけでは十分な対策になりません。

本番では、

課題文を読む時間
資料を分析する時間
設問を検討する時間
答案の構成を考える時間
実際に書く時間
最後に見直す時間

を、制限時間の中で適切に配分する必要があります。

したがって、過去問を見るときには問題の内容だけでなく、「何分で、何問に、何字で答える試験なのか」まで必ず確認します。

小論文対策とは、文章を書く練習だけではありません。

本番の条件の中で、自分の力を答案として完成させる訓練でもあります。

出題形式を確認する

次に確認するのが、志望大学の出題形式です。

大学入試の小論文は、大きく分けると、

課題文型
資料分析型
テーマ型

などがあります。

課題文型では、文章を正確に読み、筆者の主張や論理を理解したうえで設問に答える必要があります。

資料分析型では、グラフ、表、統計などから必要な情報を読み取り、そこから何が言えるのかを考察する力が求められます。

テーマ型では、与えられたテーマについて、自分が持っている知識を使いながら主張を組み立てる必要があります。

さらに実際の入試問題では、これらが組み合わされることもあります。

重要なのは、出題形式によって重点的に鍛えるべき力が変わるということです。

課題文型が中心の大学を受験するのであれば、文章を書く練習だけでなく、まず高度な文章を正確に読む力を鍛える必要があります。

資料分析型であれば、数字やグラフから特徴や変化を読み取り、それを文章化する練習が必要です。

テーマ型であれば、出題される可能性のある社会問題や学問分野について、日頃から知識を蓄積しておく必要があります。

だからこそ潜龍舎では、志望大学の出題形式を確認してから、必要な対策を決めることを重視しています。

過去3-5年分の出題テーマを分析する

過去問は、1年分だけを見るのではなく、可能であれば過去3~5年程度を並べて分析します。

そこで確認したいのは、「去年は何が出たか」だけではありません。

重要なのは、複数年の問題から、その大学・学部がどのようなテーマや能力を繰り返し問うているのかを見つけることです。

例えば、教育学部であれば、

教育格差、不登校、学校教育、子どもの発達、ICT教育、多文化共生など。

医療・看護系であれば、

高齢化、地域医療、医療倫理、患者とのコミュニケーション、生命倫理など。

国際系であれば、

移民・難民、グローバル化、文化摩擦、国際協力、環境問題など。

学部・学科によって、出題されやすい領域には一定の傾向があります。

ただし、ここで注意したいのは、「去年○○が出たから、今年は△△が出る」と予想することが目的ではないということです。

過去問分析の目的は、出題テーマを当てることではありません。

複数年の問題を通して、

この学部ではどのような社会問題に関心を持ってほしいのか
どの程度の専門的知識が前提となっているのか
課題文をどの程度深く読む必要があるのか
どのような問い方が繰り返されているのか
どのような思考力を受験生に求めているのか

を読み取ることです。

大学入試の小論文は、大学・学部から受験生への「問い」でもあります。

過去問を分析することによって、その大学・学部が受験生に何を考えてほしいのかが見えてきます。

そのうえで、出題される分野について書籍や資料を読み、必要な知識や概念を身につけていきます。

実際に1年分書いてみる

過去問を分析したら、次に行うべきことは非常にシンプルです。

実際に1年分、時間を計って解いてみることです。

「まだ小論文の書き方を勉強していないから、過去問はもっと後に取っておこう」

と考える受験生もいます。

しかし潜龍舎では、むしろ早い段階で実際の過去問に取り組むことを重視しています。

なぜなら、実際に書いてみなければ、自分が何をできて、何をできないのかが分からないからです。

たとえば、

課題文そのものが十分に読めない

という受験生もいます。

課題文は読めても、

設問が何を求めているのか分からない

という場合もあります。

設問は理解できても、

何を論点にすればよいのか分からない

場合もあります。

主張は思いついても、

その理由や根拠を説明できない

こともあります。

頭の中では考えられていても、

制限時間内に文章としてまとめられない

場合もあります。

これらはすべて「小論文が書けない」という一つの言葉で表現されてしまいますが、原因は受験生によってまったく異なります。

だからこそ、最初に一度、実際の過去問を書いてみることが重要なのです。

最初の答案は「合格答案」を作るためではない

最初に過去問を書く目的は、良い答案を完成させることではありません。

現在の自分の課題を発見することです。

潜龍舎では、実際に書いた答案を確認し、

課題文を正確に読めているか
設問の要求を理解しているか
適切な論点を設定できているか
自分の主張が明確になっているか
主張に理由・根拠があるか
具体例が適切か
文章全体の構成ができているか
論理に飛躍や矛盾がないか
語彙・表現に問題がないか

などを細かく確認します。

そこで初めて、

「この受験生は何を優先して対策すべきなのか」

が見えてきます。

読解に問題がある受験生には読解のトレーニングが必要です。

論点を設定できない受験生には、設問分析と論点設定の練習が必要です。

知識が不足しているのであれば、関連分野について読書やリサーチをする必要があります。

構成に問題があるのであれば、いきなり答案を書くのではなく、まずプロットを作る練習から始めます。

つまり、潜龍舎では、

「全員に同じ小論文の書き方を教える」のではなく、「志望大学の問題と本人の答案を分析し、必要な対策を決める」

という順番で指導を行います。

小論文対策のスタート地点は「参考書」ではなく「志望大学」

小論文対策というと、まず参考書を一冊購入し、最初のページから順番に勉強することを想像するかもしれません。

しかし、大学入試は資格試験ではありません。

受験する大学・学部によって、問題も、求められる知識も、評価される力も異なります。

だからこそ、潜龍舎では、

志望大学の過去問を確認する

出題傾向を分析する

実際に答案を書く

現在の課題を発見する

必要なトレーニングを決める

志望大学に合わせて対策する

という順番を重視しています。

「小論文一般」の勉強をするのではなく、「自分が受験する大学の小論文」の対策をする。

これが、大学入試の小論文対策を始めるうえでの基本です。

大学入試小論文の3つの出題形式

大学入試の小論文は、大学・学部によって問題の内容が大きく異なりますが、代表的な出題形式として、「課題文型」「資料分析型」「テーマ型」の3つがあります。

それぞれの形式によって、受験生に求められる力や効果的な対策方法は異なります。

そのため、小論文対策では、まず志望大学の過去問を確認し、「自分が受験する大学では、どのような形式の問題が出題されているのか」を把握することが重要です。

なお、実際の入試では、課題文と統計資料が同時に提示されるなど、複数の形式を組み合わせた問題が出題されることもあります。

課題文型小論文

「課題文型小論文」とは、与えられた文章を読み、その内容を踏まえて設問に答える形式の小論文です。

例えば、

「筆者の主張を○○字以内で要約しなさい」

「下線部について筆者がこのように述べる理由を説明しなさい」

「課題文の内容を踏まえて、あなたの考えを論じなさい」

といった問題が出題されます。

課題文型小論文で最初に必要になるのは、文章を書く力ではありません。

課題文を正確に読む力です。

どれだけ文章を書くことが得意でも、筆者の主張を読み違えてしまえば、その後の答案も設問からズレてしまいます。

たとえば、筆者がある社会問題について、

「Aという考え方には問題があり、むしろBという視点から考える必要がある」

と論じているにもかかわらず、受験生が「筆者はAを支持している」と読み違えてしまえば、その後にどれだけ立派な意見を書いても適切な答案にはなりません。

そのため、課題文型では、

文章全体のテーマは何か
筆者の問題意識は何か
筆者の主張は何か
その主張をどのような理由・根拠で説明しているか
具体例は何を説明するために使われているか
文章全体がどのような論理で構成されているか

などを正確に把握する必要があります。

「読んでから書く」のではなく、「正確に読めたから書ける」

潜龍舎では、小論文が書けない受験生に対して、いきなり「文章の書き方」を教えるとは限りません。

答案を確認した結果、そもそも課題文を正確に読めていないのであれば、まず読解から対策する必要があるからです。

課題文型小論文では、

課題文を読む

設問を理解する

論点を設定する

自分の主張を決める

理由・根拠を考える

構成する

文章を書く

という順序が重要です。

「小論文なのだから、とにかくたくさん書けば上達する」というわけではありません。

まず正確に読むこと。そのうえで設問に正確に答えること。

これが課題文型小論文の基本です。

資料分析型小論文

「資料分析型小論文」とは、グラフ、表、統計、図などの資料を読み取り、その内容を分析・考察したうえで答案を書く形式です。

たとえば、

「グラフから読み取れる特徴を説明しなさい」

「資料から分かる変化の原因について論じなさい」

「複数の資料を比較し、そこから読み取れる社会的課題についてあなたの考えを述べなさい」

といった問題が考えられます。

資料分析型で重要なのは、資料を眺めて「何となく増えている」「何となく減っている」と感想を書くことではありません。

資料から客観的に何が読み取れるのかを正確に把握することが出発点になります。

たとえばグラフであれば、

何についてのデータなのか
縦軸・横軸は何を示しているのか
単位は何か
どの期間を比較しているのか
増加・減少の傾向はあるか
特に大きな変化が起きている部分はどこか
他の項目と比較してどのような特徴があるか

などを確認します。

「資料から分かること」と「自分の推測」を区別する

資料分析型で特に注意したいのが、資料そのものから読み取れる事実と、自分がそこから推測したことを混同しないことです。

例えば、あるグラフで若者の読書時間が減少していたとしても、その資料だけから、

「スマートフォンが普及したことが原因である」

と断定できるとは限りません。

グラフから確認できるのは「読書時間が減少した」という事実であり、その原因については別の根拠が必要になる場合があります。

したがって、

資料から読み取れる事実

そこから考えられる問題

その原因についての考察

自分の主張

理由・根拠

というように、段階を分けて考えることが重要です。

資料分析型では、文章力だけではなく、情報を正確に読み取り、それを根拠として考察する力が問われます。

テーマ型小論文

「テーマ型小論文」とは、課題文や詳しい資料が与えられず、提示されたテーマや問いについて自分の考えを論じる形式です。

例えば、

「AIの普及は社会にどのような影響を与えると考えるか」

「少子高齢化社会において地域社会が果たすべき役割について論じなさい」

「あなたにとって『多様性』とは何か」

といった問題です。

一見すると、課題文を読まなくてもよいため、課題文型より簡単に思えるかもしれません。

しかし、テーマ型小論文には別の難しさがあります。

それは、自分自身の中に「書くための材料」がなければならないということです。

知識がなければ、深く論じることは難しい。

たとえば、

「少子高齢化について800字で論じなさい」

という問題が出されたとします。

少子高齢化についてほとんど知識がなければ、

「高齢者が増えることは問題だと思う」

「若者が高齢者を支える必要がある」

「子どもを増やすことが大切だ」

といった一般論だけで終わってしまう可能性があります。

一方、

人口構造
社会保障
労働力不足
地域社会
医療・介護
子育て支援
地方の人口減少

などについて一定の知識があれば、問題を複数の角度から考えることができます。

つまり、テーマ型小論文では、文章を書く技術と同時に、社会問題や志望学部の専門分野についての背景知識が重要になります。

「ニュースを見る」だけでは十分とは限らない

小論文対策として「ニュースを見ましょう」「新聞を読みましょう」と言われることがあります。

もちろん、社会の出来事に関心を持つことは重要です。

しかし、ニュースを断片的に知っているだけでは、その問題について深く論じることは難しい場合があります。

なぜその問題が起きているのか。

どのような歴史的・社会的背景があるのか。

現在どのような対策が行われているのか。

その対策にはどのような課題があるのか。

こうしたところまで理解するためには、必要に応じて書籍、論文、統計、公的機関の資料などを使って学ぶことも重要です。

特に志望学部に関係するテーマについては、早い段階から知識を蓄積しておくことをおすすめします。

出題形式が違えば、対策も変わる

この3つを整理すると、それぞれ重点的に必要となる力が見えてきます。

出題形式特に重要な力
課題文型読解力・要約力・設問分析・論理的思考
資料分析型資料読解・比較・分析・考察・論理的説明
テーマ型背景知識・論点設定・主張・根拠・具体例

ただし、これは完全に別々の能力ではありません。

課題文型でも背景知識が役立ちますし、資料分析型でも自分の主張を論理的に説明する必要があります。テーマ型でも、設問が何を求めているのかを正確に理解しなければなりません。

そのため、まず志望大学の過去問を複数年分確認し、

どの形式が多いのか
どのような設問が出るのか
どのようなテーマが扱われているのか
自分にはどの力が不足しているのか

を分析したうえで、必要な対策を行うことが重要です。

「小論文」という一つの試験を対策するのではなく、「自分が受験する大学・学部の小論文」を対策する。

これが潜龍舎が志望大学の過去問を重視している理由でもあります。

次に、小論文がなかなか書けない受験生に共通して見られる、「語彙」「具体例」「論理」の3つの問題について詳しく見ていきます。

小論文が書けない人に共通する3つの問題

「小論文を書こうとしても、何を書けばよいのか思いつかない」

「書き始めることはできるけれど、途中で何を書いているのか分からなくなる」

「時間をかけて書いているのに、なかなか評価される答案にならない」

小論文が苦手な受験生には、さまざまな悩みがあります。

しかし、これまで多くの答案を指導してきた経験から見ると、小論文がうまく書けない原因にはいくつかの共通点があります。

潜龍舎では、特に重要な問題として、

① 語彙が不足している
② 適切な具体例を挙げられない
③ 論理を構成できない

という3点を重視しています。

小論文対策というと、「序論・本論・結論の型を覚える」「たくさん答案を書く」といった方法が注目されがちです。

しかし、そもそも言葉を知らない、論じるための材料を持っていない、考えを論理的につなげられないという状態では、「型」だけを覚えても説得力のある小論文を書くことはできません。

まず、自分がこの3つのうちどこに問題を抱えているのかを確認することが、小論文上達の第一歩です。

① 語彙が不足している

小論文を書くためには、ある程度の語彙力が必要です。

ここでいう語彙力とは、単に難しい言葉をたくさん知っているという意味ではありません。

文章の中で使われている言葉を正確に理解し、自分が考えていることを適切な言葉で表現できる力のことです。

語彙が不足すると、小論文では大きく二つの問題が生じます。

一つ目は、課題文を正確に読めなくなることです。

大学入試の課題文には、

「普遍性」「相対化」「規範」「公共性」「共同体」「アイデンティティ」「多様性」「持続可能性」

など、日常会話ではそれほど頻繁に使わない抽象的な言葉が登場することがあります。

重要な語句の意味を十分に理解できなければ、文章を読んでいるつもりでも、筆者が何を問題にしているのか、何を主張しているのかを正確につかめません。

つまり、

語彙不足

課題文を正確に読めない

設問を正しく理解できない

的確な答案を書けない

という問題につながります。

二つ目は、自分の考えを正確に表現できなくなることです。

頭の中では何となく考えていることがあっても、それを表現する言葉を持っていなければ、

「大切だと思う」

「問題だと思う」

「もっと良くするべきだ」

「みんなで考える必要がある」

といった曖昧な表現を繰り返すことになります。

これでは、自分が何を問題だと考え、どのような立場から何を主張しているのかが読み手に十分伝わりません。

難しい言葉を使えばよいわけではない

ただし、小論文で評価されるために、難解な専門用語を無理に使う必要はありません。

むしろ、意味を十分に理解していない言葉を使うと、文章が不自然になったり、誤った意味で使用したりする可能性があります。

大切なのは、自分が理解している言葉を増やし、その言葉を正確に使えるようにすることです。

そのためには、日頃から課題文、書籍、新聞、論説文などを読み、分からない言葉に出会ったら意味を調べる習慣をつけることが重要です。

語彙を増やすことは、「文章を格好よくするため」ではありません。

読むためにも、考えるためにも、書くためにも必要な基礎力なのです。

② 適切な具体例を挙げられない

二つ目の問題は、自分の主張を支える適切な具体例を挙げられないことです。

小論文では、

私は○○が重要だと考える。

と主張するだけでは十分ではありません。

読み手が知りたいのは、

「なぜ、そう言えるのか」

だからです。

そこで重要になるのが、理由や根拠、そして具体例です。

例えば、

「地域社会における多文化共生を進めるためには、異なる文化的背景を持つ人々が交流する機会を増やす必要がある」

と主張するとします。

この主張を説得力のあるものにするためには、実際にどのような問題が生じているのか、どのような取り組みが行われているのか、どのような事例からその主張が導かれるのか、といった材料が必要になります。

「自分の体験を書けば具体例になる」とは限らない

小論文では、自分自身の経験を具体例として使うこともできます。

しかし、

「私の学校でもそうだった」

「私の友人も同じことを言っていた」

という個人的な経験だけから、社会全体について大きな結論を導くことには注意が必要です。

一人の経験が、そのまま社会全体を説明する根拠になるとは限らないからです。

重要なのは、自分の主張を説明するために、その具体例が本当に適切なのかを考えることです。

具体例が思いつかない原因は「知識不足」のこともある

「具体例が思いつきません」という受験生に対して、文章のテクニックだけを教えても解決しない場合があります。

そもそも、そのテーマについて十分な知識を持っていないからです。

例えば「日本の少子化対策について論じなさい」と問われても、

現在どのような状況なのか、どのような原因が指摘されているのか、どのような政策が行われているのかをほとんど知らなければ、具体的な議論を展開することは難しくなります。

したがって、小論文対策には、文章を書く練習だけではなく、

ニュースを読む
書籍を読む
統計や公的資料を見る
志望学部に関連する社会問題を調べる

といった、「書くための材料」を増やす勉強も必要です。

特にテーマ型小論文では、この背景知識の蓄積が答案の内容を大きく左右します。

③ 論理を構成できない

三つ目は、自分の考えを論理的に組み立てられないことです。

これは、小論文が苦手な受験生に非常によく見られる問題です。

例えば、

「私はAだと思う。Bという問題もある。また、Cも重要だ。私の学校ではDという経験をした。したがってAが重要である。」

という文章を書いたとします。

一つひとつの文章の意味は理解できても、

AとBはどうつながるのか。
なぜBの次にCが出てくるのか。
Dという経験は何を証明しているのか。
なぜ最終的にAという結論になるのか。

が説明されていなければ、読み手には論理が伝わりません。

小論文では、たんに「良いこと」をたくさん書くのではなく、一つひとつの文や段落がどのような関係にあるのかを考える必要があります。

「思いついた順番」に書かない

小論文が苦手な受験生の答案では、問題を読んだ後、頭に浮かんだことからそのまま書き始めてしまうことがあります。

しかし、書きながら次に何を書くかを考えていると、

途中で主張が変わる
同じことを何度も書く
話題が突然変わる
具体例が主張とつながらない
最初と最後で矛盾する

といった問題が起こりやすくなります。

そのため、潜龍舎では、いきなり答案を書き始めるのではなく、書く前に論点・主張・理由・根拠・具体例などを整理し、文章全体の構成(プロット)を作ることを重視しています。

たとえば、

設問は何を求めているのか

何を論点にするのか

自分は何を主張するのか

なぜそう考えるのか

その根拠・具体例は何か

そこからどのような結論を導くのか

という順番で考えます。

この「設計図」を作ってから文章を書くことで、答案全体の一貫性を保ちやすくなります。

接続詞は「論理関係」を読み手に示す

「しかし」「したがって」「なぜなら」「一方で」「たとえば」といった接続詞を適切に使うことも重要です。

ただし、接続詞を入れれば論理的な文章になるわけではありません。

重要なのは、

前の文と次の文が、実際にどのような関係になっているのか

を考え、その関係を読み手に分かりやすく示すために接続詞を使うことです。

例えば、

主張 → なぜなら → 理由

理由 → たとえば → 具体例

反対意見 → しかし → 自分の反論

考察 → したがって → 結論

というように、文と文、段落と段落の関係を明確にします。

小論文で求められる論理とは、難しい言葉を使うことではありません。

「なぜこの主張からこの結論になるのか」を、読み手が筋道を追って理解できるようにすることです。

3つの問題は互いにつながっている

ここまで、

① 語彙
② 具体例
③ 論理

という3つの問題を説明してきました。

実際には、この3つは独立しているわけではありません。

たとえば、語彙が不足していれば課題文を十分に理解できず、適切な論点を設定することが難しくなります。

背景知識が不足していれば、主張を思いついても、それを支える根拠や具体例を示せません。

そして、材料を持っていても、それらを適切な順序で組み立てられなければ、読み手に伝わる答案にはなりません。

つまり、

言葉を知る

文章を正確に読む

テーマについて考える材料を持つ

主張と根拠を考える

論理的に構成する

文章として表現する

という一連の力が必要なのです。

だからこそ、小論文対策はたんに「たくさん書けばよい」というものではありません。

まず自分の答案を分析し、「なぜ書けないのか」を特定して、その原因に応じた対策を行うことが重要です。

小論文を書くために必要な「読解力」

小論文対策というと、多くの受験生はまず「文章を書く練習」を思い浮かべます。

しかし、特に課題文型の小論文では、書く力の前に「読む力」が必要です。

どれほど文章を書くことが得意でも、課題文の内容や筆者の主張を正確に理解できていなければ、設問に対して適切な答案を書くことはできません。

潜龍舎では、小論文指導において、

「書けない原因が、本当に『書く力』にあるのか」

をまず確認します。

実際には、「小論文が書けない」と悩んでいる受験生の中に、文章表現以前の段階で、課題文を十分に読み取れていないケースが少なくありません。

小論文は「読む→考える→書く」試験

課題文型小論文では、おおむね次のような過程を経て答案を作ります。

課題文を読む

筆者の問題意識・主張を理解する

設問が何を求めているのかを理解する

論点を設定する

自分の主張を考える

理由・根拠・具体例を考える

構成を作る

答案を書く

この一連の流れを見ると、実際に文章を書き始めるのはかなり後の段階であることが分かります。

ところが、小論文が苦手な受験生ほど、課題文を読み終えるとすぐに答案を書き始めてしまう傾向があります。

これでは、課題文の理解が不十分なまま自分の意見を書いたり、設問が求めていることとは違う内容を論じたりする危険があります。

小論文では、「何を書くか」を考える前に、「何が書かれているのか」を正確に理解することが重要なのです。

課題文では「筆者の主張」をつかむ

課題文を読む際に最も重要なのが、

「筆者は結局、何を主張しているのか」

をつかむことです。

ただし、文章の中から「主張らしい一文」を一つ探せばよいわけではありません。

大学入試で使用される課題文では、筆者が、

問題を提示する

一般的な考え方を紹介する

その考え方の問題点を指摘する

具体例を示す

別の考え方を提示する

自分の主張を導く

といった形で議論を展開していることがあります。

そのため、文章の一部分だけを見るのではなく、文章全体の論理展開を追いながら読む必要があります。

「何について書かれているか」だけでは不十分

たとえば、AIについて書かれた課題文を読んで、

「この文章はAIについて書かれている」

と理解しただけでは、十分な読解とはいえません。

さらに、

AIの何が問題になっているのか

筆者は従来の考え方のどこを批判しているのか

AIと人間の関係をどのように捉えているのか

筆者は最終的に何を主張しているのか

まで理解する必要があります。

つまり、

テーマを把握すること

と、

筆者の問題意識・主張を理解すること

は別です。

小論文では後者まで読み取ることが求められます。

「具体例」と「筆者の主張」を区別する

課題文を読む際に注意したいのが、具体例を筆者の主張そのものだと勘違いしないことです。

筆者は、自分の主張を説明するために、さまざまな具体例やエピソードを使います。

たとえば、

学校教育の問題を論じるために、自身の学生時代の経験を紹介する。

情報社会の問題を説明するために、SNSの事例を取り上げる。

格差について論じるために、特定の国の事例を紹介する。

といった場合です。

重要なのは、その具体例そのものではなく、

「筆者は、この具体例を使って何を説明しようとしているのか」

を考えることです。

課題文を要約する問題でも、具体例ばかりを書き写してしまうと、筆者の主張を適切にまとめられないことがあります。

「対比」に注目すると文章の論理が見えやすい

大学入試の課題文では、二つの考え方を比較・対比しながら議論を進める文章がよくあります。

例えば、

個人 ↔ 社会

自由 ↔ 規制

効率 ↔ 公平

普遍 ↔ 特殊

グローバル ↔ ローカル

従来の考え方 ↔ 筆者が提示する新しい考え方

などです。

こうした対比を見つけると、筆者が何を問題にし、どちらの考え方を重視しているのかを理解しやすくなります。

特に、

「しかし」
「一方で」
「ところが」
「むしろ」
「これに対して」
「確かに~。しかし~」

といった表現が登場したときには、その前後で論理がどのように動いているのかを確認することが重要です。

接続詞を単なる言葉として見るのではなく、筆者の思考の方向を示す標識として読むということです。

「要約できるか」が読解できているかの一つの目安になる

課題文を本当に理解できているかを確認する方法の一つが、自分の言葉で要約してみることです。

文章を読んだ後に、

「この文章で筆者が問題にしていることは何か」

「筆者が最も主張したいことは何か」

「なぜ筆者はそう考えているのか」

を短く説明できるか確認してみましょう。

文章中の表現をそのまま抜き出すのではなく、自分の言葉で説明できることが重要です。

うまく説明できない場合には、文章の内容を「分かったつもり」になっている可能性があります。

課題文の「要約」と「自分の意見」を混同しない

小論文では、筆者の主張と自分の主張を明確に区別することも重要です。

たとえば、設問で、

「筆者の主張を200字以内で要約しなさい」

と求められているのであれば、そこで書くべきなのは基本的に筆者の考えです。

自分が筆者に賛成か反対かを書く問題ではありません。

一方、

「課題文の内容を踏まえて、あなたの考えを800字以内で論じなさい」

と問われた場合には、筆者の問題提起や主張を理解したうえで、自分自身の立場を論じる必要があります。

つまり、

筆者は何を言っているのか

自分はどう考えるのか

を混同しないことが大切です。

読解力が不足すると「負のループ」が始まる

潜龍舎では、小論文がうまく書けない原因を考える際、次のような連鎖を重視しています。

課題文を正確に読めない

設問の意味を正確に理解できない

適切な論点を設定できない

自分の主張を適切に決められない

答案の構成が崩れる

設問からズレた小論文になる

最後に現れるのは「うまく書けない」という症状ですが、問題の出発点は、もっと前の「読む」段階にあることがあります。

この状態で文章表現だけを添削しても、根本的な問題はなかなか改善しません。

だからこそ、潜龍舎では答案だけを見るのではなく、必要に応じて、

「そもそも課題文をどう読んだのか」

まで遡って確認します。

小論文の読解では「筆者に賛成する」必要はない

もう一つ重要なのは、課題文を理解することと、筆者の意見に賛成することは別だということです。

自分とは異なる考え方の文章が出題されることもあります。

その場合でも、

「私はこの筆者に反対だから、この文章はおかしい」

と最初から自分の価値観で判断するのではなく、

「筆者はどのような前提に立ち、どのような理由から、この結論を導いているのか」

をまず正確に理解する必要があります。

そのうえで設問が自分の意見を求めているのであれば、筆者の主張を踏まえて賛成・反対、あるいは別の立場を論じればよいのです。

これは大学での学びにも通じる重要な姿勢です。

自分とは異なる考え方であっても、まず正確に理解したうえで検討する。

小論文では、こうした知的な態度も必要になります。

「読む力」を鍛えることが「書く力」につながる

小論文対策では、答案をたくさん書くことももちろん重要です。

しかし、課題文型小論文の場合、

「書けないから、もっと書く」

だけでは解決しないことがあります。

課題文を正確に読み、筆者の問題意識や主張、論理展開を理解できるようになることで、初めて、

何について答えるべきなのか

何を論点にすべきなのか

自分の主張をどこに置くべきなのか

が見えてきます。

したがって、課題文型小論文の対策では、

読む力と書く力を切り離して考えないこと

が重要です。

正確に読むことが、正確に考えることにつながり、正確に考えることが、説得力のある小論文を書くことにつながります。

小論文は「書く試験」であると同時に、「読む→考える→書く」という一連の思考力を問う試験なのです。

設問を分析し「何を答えるべきか」を明確にする

課題文を正確に読むことができても、それだけで小論文を書くことはできません。

次に必要になるのが、設問を正確に分析することです。

大学入試の小論文では、「何か良いことを書けば評価される」わけではありません。どれほど知識が豊富で、文章が上手であっても、設問が求めていることに答えていなければ、適切な答案とはいえません。

潜龍舎では、小論文を書く前に必ず、

「この設問は、自分に何をさせようとしているのか」

を明確にすることを重視しています。

小論文は「問いに答える」試験である

例えば、次のような設問があったとします。

「課題文を踏まえて、少子高齢化が地域社会に与える影響について、あなたの考えを800字以内で論じなさい。」

この問題を見て、すぐに「少子高齢化について知っていること」を書き始めてはいけません。

まず設問を分解します。

この設問には、

① 課題文を踏まえること
② 少子高齢化を扱うこと
③ 地域社会への「影響」を論じること
④ 自分の考えを示すこと
⑤ 800字以内でまとめること

という複数の条件があります。

つまり、

「日本では少子高齢化が進んでいる」

「子育て支援を充実させるべきだ」

といった内容を自由に書けばよいわけではありません。

問われている中心は、「少子高齢化が地域社会にどのような影響を与えるのか」です。

ここを外してしまえば、少子高齢化についてどれほど詳しく書いても、設問に正面から答えた答案にはなりません。

設問の「指示語」に注目する

設問を分析するときには、特に「何をしなさい」と指示されているのかに注目します。

大学入試では、例えば次のような表現が使われます。

「要約しなさい」
→ 課題文の中心的な内容を整理して簡潔にまとめる。

「説明しなさい」
→ なぜそう言えるのか、あるいはそれが何を意味するのかを明らかにする。

「比較しなさい」
→ 複数の対象について、共通点や相違点などを明確にする。

「原因を論じなさい」
→ その問題がなぜ生じているのかを考察する。

「影響について論じなさい」
→ ある事象によって何が起こるのかを考察する。

「解決策を論じなさい」
→ 問題に対してどのような対応が可能かを、その理由とともに示す。

「あなたの考えを論じなさい」
→ 自分の立場・主張を明確にし、その理由や根拠を示す。

この違いは非常に重要です。

たとえば「原因を説明しなさい」と問われているのに、答案の大部分を「解決策」に使ってしまえば、内容そのものが間違っていなくても設問への回答としてはズレています。

小論文では、「何について書いたか」だけではなく、「何を問われ、それにどう答えたか」が重要なのです。

「課題文を踏まえて」を無視しない

課題文型小論文で特に注意したいのが、

「課題文を踏まえて」

「筆者の主張を踏まえて」

「本文の内容を参考にして」

といった条件です。

このような指示がある場合、課題文は単なる「話題提供」ではありません。

課題文でどのような問題が提示され、筆者がどのような視点からその問題を論じているのかを理解したうえで、自分の議論につなげる必要があります。

ところが、受験生の答案では、課題文を読んだにもかかわらず、答案になると課題文の内容がほとんど反映されず、

「私は以前から○○だと思っていた」

という自分の意見だけを書いてしまうことがあります。

これでは「課題文を踏まえて」という条件に十分応えられていません。

逆に、課題文の内容を長々と要約するだけで、自分の考えがほとんど書かれていない答案も問題です。

重要なのは、

筆者は何を問題にしているのか

その問題について設問は何を問うているのか

それに対して自分は何を主張するのか

という関係を明確にすることです。

一つの設問に「複数の要求」が含まれていることもある

大学入試では、一つの設問の中に複数の課題が含まれている場合があります。

たとえば、

「資料から読み取れる日本社会の変化を説明したうえで、その原因を考察し、今後必要となる取り組みについてあなたの考えを800字以内で述べなさい。」

という問題です。

この設問には少なくとも、

① 資料から変化を読み取る
② その変化を説明する
③ 原因を考察する
④ 今後必要な取り組みを提示する
⑤ その取り組みについて自分の考えを論じる

という複数の要求があります。

このうち一つだけに答えても、設問全体に答えたことにはなりません。

そこで、答案を書く前に設問へ印を付けたり、要求されていることを箇条書きにしたりして、「自分が答案の中で必ず答えなければならないこと」を可視化しておくことが有効です。

「キーワード」だけではなく「関係」を読む

設問分析では、重要そうな単語に線を引くだけでは十分ではありません。

たとえば、

「SNSの普及が若者の人間関係に与える影響について、その利点と問題点の双方に触れながら、あなたの考えを論じなさい。」

という設問があったとします。

「SNS」「若者」「人間関係」というキーワードだけを拾って、

「SNSについて書けばいい」

と考えるのは不十分です。

この問題では、

SNSの普及

若者の人間関係への影響

という関係について、

さらに、

利点と問題点の「双方」

を扱うことが求められています。

つまり設問分析とは、単語探しではなく、「何と何の関係について、どのような観点から論じることを求められているのか」を理解する作業なのです。

「自分の意見」を聞かれているとは限らない

小論文というと、何でも自分の意見を書く試験だと思われがちです。

しかし、設問によっては必ずしも自分の意見を求めているとは限りません。

例えば、

「筆者が○○と述べる理由を説明しなさい。」

という問題で必要なのは、まず筆者の論理を説明することです。

ここで、

「私は筆者に反対である」

と自分の意見を書いても、設問には答えていません。

同様に、

要約を求められているのか
内容説明を求められているのか
資料の分析を求められているのか
自分の主張を求められているのか

を区別する必要があります。

「小論文=自分の意見を書くもの」

という思い込みをいったん捨て、設問ごとに何を要求されているのかを確認することが重要です。

字数も「設問」の一部として考える

設問分析では、文字数にも注目します。

たとえば、

「100字以内で説明しなさい」

という問題と、

「800字以内で論じなさい」

という問題では、大学側が期待している答案の内容や深さも異なります。

100字程度なら、中心的な内容を簡潔かつ正確にまとめる力が問われます。

一方、800字程度で自分の考えを論じるのであれば、主張だけでなく、理由、根拠、具体例、反対意見への検討などを組み込める可能性があります。

文字数は単なる制限ではありません。

「どの程度まで説明することを求められているのか」を考えるための手がかりでもあります。

書き始める前に「設問を一文で言い換える」

潜龍舎では、小論文を書く前に、

「結局、この問題は何を聞いているのか?」

を自分の言葉で説明できる状態にすることを重視しています。

たとえば、

「課題文を踏まえて、AIの普及によって教育がどのように変化するかについて、利点と課題の双方から論じなさい。」

という設問なら、

「AIが教育にもたらす良い面と問題点の両方を考え、自分は教育がどう変わると考えるのかを説明する問題」

と、自分の言葉で言い換えてみます。

これができない場合、設問を十分に理解できていない可能性があります。

逆に、「何を答える問題なのか」が一文で言えるようになると、答案の方向性もかなり明確になります。

設問からズレた答案は、文章を直すだけでは改善しない

小論文の添削では、

誤字脱字を直す
表現を整える
接続詞を修正する

といった文章上の修正に目が向きがちです。

しかし、答案そのものが設問からズレている場合、文章表現をいくら整えても根本的な改善にはなりません。

その場合に必要なのは、

「この表現をこう直しましょう」

ではなく、

「あなたは、この設問をどう読んだのか」

まで戻って確認することです。

潜龍舎が小論文指導で重視しているのも、この点です。

答案に現れた問題だけを見るのではなく、

課題文をどう読んだのか

設問をどう理解したのか

何を論点として設定したのか

なぜこの主張を選んだのか

どのような構成で論証しようとしたのか

という答案ができるまでの思考過程を確認します。

「問われたことに答える」が小論文の出発点

小論文では、知識が多いことも、文章が上手であることも大切です。

しかし、それ以前に必要なのが、

「問われたことに、正確に答える」

という姿勢です。

設問を読んだら、すぐに書き始めるのではなく、

① 何について問われているのか
② 何をするよう指示されているのか
③ 課題文・資料をどのように使う必要があるのか
④ 複数の要求が含まれていないか
⑤ 自分の意見が求められているのか
⑥ 何字で答えるのか

を確認します。

そして最後に、

「この問題に対して、自分は何を答えるのか」

を明確にします。

ここまでできて、ようやく次の段階へ進むことができます。

その次に必要になるのが、設問に答えるために「何について論じるのか」を決めること――すなわち「論点設定」です。

小論文の「論点」を設定する――何について論じるのかを決める

課題文を読み、設問が何を求めているのかを理解したら、すぐに答案を書き始めるのでしょうか。

まだです。

次に必要になるのが、「論点」を設定することです。

論点とは簡単にいえば、

「この小論文で、自分は何について論じるのか」

という議論の焦点です。

小論文では、与えられたテーマについて思いついたことを何でも書けばよいわけではありません。

設問が求めていることを踏まえたうえで、何を問題として取り上げ、どこに焦点を当てて論じるのかを決める必要があります。

この論点が曖昧なまま文章を書き始めると、

話題が途中で変わる
主張が何なのか分からなくなる
具体例がバラバラになる
最初と最後で違う話をしてしまう

といった問題が起こりやすくなります。

小論文を書く前に、まず「自分はこの答案で何を論じるのか」を明確にしましょう。

「テーマ」と「論点」は違う

まず理解しておきたいのが、テーマと論点は同じではないということです。

例えば、問題のテーマが、

「少子高齢化」

だったとします。

しかし、「少子高齢化」は非常に大きなテーマです。

少子高齢化について考えられる問題には、

社会保障
労働力不足
地域社会
医療・介護
教育
子育て支援
地方の人口減少
世代間格差

など、さまざまなものがあります。

800字程度の小論文で、これらすべてについて十分に論じることはできません。

そこで必要になるのが論点設定です。

例えば、

「少子高齢化による地方の公共交通の維持をどうするか」

「少子高齢化社会において世代間の負担をどう考えるべきか」

「少子化対策として子育て支援だけで十分なのか」

など、テーマの中から自分が実際に論じる問題を絞り込みます。

つまり、

テーマ=何についての問題なのか

に対して、

論点=そのテーマの「何を問題として論じるのか」

と考えると分かりやすいでしょう。

「設問」と「論点」も同じではない

前章では、設問を分析して「何を答えるべきか」を明確にすることが重要だと説明しました。

では、設問が分かれば論点も自動的に決まるのでしょうか。

必ずしもそうではありません。

たとえば、

「SNSの普及が若者の人間関係に与える影響について、あなたの考えを800字以内で論じなさい。」

という設問があったとします。

ここで大学側から与えられている問いは、

「SNSの普及は若者の人間関係にどのような影響を与えているのか」

です。

しかし、これだけではまだ広すぎます。

たとえば、

SNSによって人間関係が広がること

を中心に論じることもできます。

一方で、

SNSによって他者との比較が増えること

を問題にすることもできます。

あるいは、

オンライン上のつながりと対面での人間関係の違い

に焦点を当てることもできます。

設問を理解したうえで、

「この問いに答えるために、自分はどこに焦点を当てるのか」

を決める。

これが論点設定です。

論点が広すぎると「一般論」になる

小論文でよく見られる問題の一つが、論点が広すぎることです。

たとえば、

「環境問題について論じなさい」

という問題に対して、

「現在、世界ではさまざまな環境問題が起きている。地球温暖化や海洋汚染、森林破壊などである。私たちは環境を守るために一人ひとりが努力する必要がある。」

と書いたとします。

間違ったことを書いているわけではありません。

しかし、テーマがあまりにも広いため、

「結局、何を問題にしているのか」

が見えてきません。

そこで例えば、

「プラスチックごみ削減を個人の努力だけに委ねることの限界」

という論点を設定すると、

何が問題なのか、どのような立場を取るのか、何を根拠として論じるのかが明確になります。

小論文では、大きなテーマをそのまま論じるのではなく、自分が論証できる大きさまで問題を絞り込むことが重要です。

「賛成・反対」を決めることだけが論点設定ではない

論点設定というと、

「賛成か、反対かを決めること」

だと思うかもしれません。

しかし、それだけではありません。

たとえば、

「学校教育への生成AIの導入について論じなさい」

という問題があった場合、

「生成AIの導入に賛成である」

と決めるだけでは、まだ十分ではありません。

何について賛成しているのでしょうか。

授業での利用なのか。

宿題での利用なのか。

教員による利用なのか。

生徒が文章作成に利用することなのか。

また、どのような条件で認めるのでしょうか。

たとえば、

「生成AIを一律に禁止するのではなく、生徒自身が情報の妥当性を検証することを前提として、学習支援に利用すべきではないか」

と設定すれば、議論の焦点がかなり明確になります。

つまり論点とは、

単なる「賛成・反対」ではなく、「何を問題として、どの角度から検討するのか」

を決めることなのです。

良い論点は「問い」の形にできる

論点を設定するときには、問いの形にしてみることをおすすめします。

たとえば、

テーマ:少子化

であれば、

「少子化を改善するためには、経済的支援だけで十分なのか?」

テーマ:AIと教育

であれば、

「学校教育で生成AIをどこまで利用するべきなのか?」

テーマ:地域社会

であれば、

「人口減少地域の公共サービスを従来と同じ形で維持する必要があるのか?」

という具合です。

問いの形にすると、

自分が何について考えようとしているのか

が明確になります。

そして、その問いに対する自分なりの答えが、次に考える「主張」になります。

「論点」と「主張」を区別する

ここも非常に重要です。

論点=何について考えるのか

主張=その論点について、自分はどう考えるのか

です。

たとえば、

論点

「学校教育で生成AIをどこまで利用するべきか?」

に対して、

主張

「生成AIを全面的に禁止するのではなく、生徒が生成された情報を検証する力を身につけることを条件として、学習支援に活用すべきである。」

という関係になります。

この二つを区別できるようになると、小論文の構成はかなり考えやすくなります。

設問

論点

主張

理由

根拠・具体例

結論

という形で、一つずつ答案を組み立てられるからです。

課題文型では「筆者の問題意識」から論点を考える

課題文型小論文では、自分の好きな論点を自由に設定してよいとは限りません。

特に、

「課題文を踏まえて論じなさい」

と指示されている場合には、筆者が何を問題としているのかを理解したうえで論点を設定する必要があります。

たとえば、課題文の筆者が、

「SNSは人間関係を希薄にする」

という単純な議論を批判し、

「オンラインとオフラインを区別して考えること自体が難しくなっている」

と論じているとします。

それにもかかわらず、

「SNSにはメリットとデメリットがあります。」

という一般的な論点に戻してしまえば、課題文を十分に踏まえた議論にはなりません。

重要なのは、

「筆者は、従来の議論の何を問題にしているのか」

を把握し、その問題意識と設問を踏まえて自分の論点を設定することです。

資料分析型では「資料から何が問題として見えるか」を考える

資料分析型小論文でも同様です。

たとえば、ある地域について、

高齢者人口は増加
路線バスの利用者は減少
バス路線も減少

という資料が提示されたとします。

ここから、

「高齢化が進んでいる。」

と書くだけでは、資料の説明にとどまります。

そこから、

「自家用車を利用できない高齢者の移動手段を地域社会はどのように確保するべきか」

という問いを立てれば、論点になります。

資料から事実を読み取り、

「そこにはどのような問題があるのか」

を考えることが重要です。

良い論点には「自分が論証できる」という条件もある

面白そうな論点を選べばよいわけでもありません。

小論文では、その論点について理由や根拠を示しながら論証できることが必要です。

たとえば、800字しかない答案で、

「世界から貧困をなくすためにはどうすればよいか」

という巨大な論点を設定しても、十分に論じることは難しいでしょう。

一方、

「子どもの教育機会の格差を縮小するために、学校外教育への公的支援を拡充すべきか」

と絞れば、問題の範囲が明確になり、具体的に論じやすくなります。

論点を設定するときには、

設問に答えているか
課題文・資料を踏まえているか
字数の中で論じられるか
自分が理由・根拠を示せるか
具体例を用意できるか

を確認することが重要です。

論点が決まらないまま書き始めない

小論文が苦手な受験生ほど、問題を読んだ後、

「とりあえず最初の一文を書いてみよう」

と考えてしまいがちです。

しかし、論点が決まっていない状態で文章を書き始めると、書きながら自分が何を論じたいのかを探すことになります。

その結果、

途中で話題が変わる
主張が変わる
関係のない具体例が入る
同じ内容を繰り返す
最後になって字数が足りなくなる

といった問題が起こります。

潜龍舎では、このような「書きながら考える」答案にならないよう、実際に文章を書く前の思考過程を重視しています。

まず、

「この問題で、自分は何を論点にするのか」

を一文で説明できる状態にします。

「論点を一文で言えるか」を確認する

答案を書く前に、次の質問を自分にしてみてください。

「私は、この小論文で何について論じるのか?」

これに対して、

「環境問題についてです。」

「AIについてです。」

「少子化についてです。」

としか答えられないのであれば、それはまだ「テーマ」の段階です。

一方、

「プラスチックごみの削減を個人の努力だけに任せることの限界について論じます。」

「学校教育において生成AIをどのような条件で利用すべきかについて論じます。」

と答えられるのであれば、論点はかなり明確になっています。

論点を一文で説明できること。

これを、答案を書き始める前の一つのチェックポイントにするとよいでしょう。

小論文は「論点」を中心に組み立てる

ここまでの流れを整理すると、

課題文・資料を正確に読む

設問が何を求めているのかを理解する

何について論じるのか=「論点」を設定する

となります。

そして論点が決まったら、次に考えるのが、

「その論点について、自分は何を主張するのか」

です。

さらに、

なぜそう主張できるのか
どのような根拠があるのか
どのような具体例を使うのか
反対の立場にはどのように応答するのか

を整理していきます。

つまり、

設問 → 論点 → 主張 → 理由・根拠 → 具体例 → 結論

という流れです。

小論文は、思いついたことを800字並べる試験ではありません。

与えられた問いを理解し、適切な論点を設定し、その論点について一貫した議論を組み立てる試験です。

そのため、答案を書き始める前に、

「私は、この小論文で何を論じるのか」

を必ず明確にしておきましょう。

小論文の構成――書く前に「プロット」を作る

小論文の問題を読んだら、すぐに原稿用紙へ文章を書き始めてはいけません。

潜龍舎では、小論文を書く際に非常に重要なこととして、

「書きながら考える」のではなく、「考えてから書く」

ことを重視しています。

小論文が苦手な受験生の答案を見ていると、問題を読んだ後、思いついたことからすぐに書き始めてしまうケースが少なくありません。

最初の200字くらいまでは順調に書けても、途中から、

「次に何を書けばいいんだろう?」

となってしまいます。

そして、書きながら次の内容を考えるため、

同じことを繰り返す
途中で話題が変わる
主張と具体例がつながらない
突然、新しい話が出てくる
最初と最後で主張が変わる
字数が足りなくなる、あるいは超過する

といった問題が生じます。これは文章表現以前の問題です。

文章全体の設計図を作らないまま書き始めていることに原因があります。

そこで潜龍舎では、答案を書く前に「プロット」を作ることを重視しています。

小論文の「プロット」とは?

プロットとは、簡単にいえば、小論文を書く前に作る答案の設計図です。

実際の文章を書く前に、

何を問われているのか
何について論じるのか
何を主張するのか
なぜそう主張するのか
どのような根拠を示すのか
どのような具体例を使うのか
最終的にどのような結論を導くのか

を整理します。

潜龍舎では、基本的に次のような流れで考えていきます。

設問分析

論点

主張

理由

根拠・具体例

結論

この段階では、きれいな文章を書く必要はありません。

箇条書きでも、単語でも構いません。

重要なのは、答案全体の論理を完成させてから文章を書き始めることです。

① 設問分析――「何を答える問題なのか」を確認する

最初に行うのは、前章で説明した設問分析です。

例えば、

「学校教育における生成AIの利用について、その利点と問題点の双方に触れながら、あなたの考えを800字以内で論じなさい。」

という設問があったとします。

まず確認するのは、

何について問われているのか

です。

この場合、

学校教育における生成AIの利用

がテーマです。

さらに、

利点と問題点の「双方」に触れる

ことが条件になっています。

そして最終的には、

自分の考えを論じる

ことが求められています。

このように設問を分解し、答案の中で必ず答えなければならないことを最初に確認します。

② 論点――「何について論じるのか」を決める

次に論点を設定します。

「生成AIについて」というだけでは広すぎます。

たとえば、

「学校教育では、生徒による生成AIの利用をどこまで認めるべきか」

という問いに絞ります。

これが、この小論文で議論する中心的な問題=論点です。

論点を絞ることで、その後に考える主張・理由・具体例も選びやすくなります。

③ 主張――「自分はどう考えるのか」を一文にする

論点が決まったら、それに対する自分の答えを決めます。

例えば、

「学校教育では生成AIを全面的に禁止するのではなく、生徒自身による検証を前提として学習支援に利用すべきである。」

とします。

これが主張です。

この段階で重要なのは、自分の主張を一文で言えるようにすることです。

「AIには良いところも悪いところもあると思います」

では、自分が最終的に何を主張したいのか分かりません。

読み手から、

「それで、あなたはどうすべきだと考えているのですか?」

と聞かれたとき、一文で答えられる状態にしておきます。

④ 理由――「なぜそう考えるのか」を説明する

主張を決めたら、必ず次の質問をします。

「なぜ?」

先ほどの例で、

「生成AIを全面的に禁止するべきではない」

と主張するのであれば、

なぜ禁止すべきではないのでしょうか。

たとえば、

「生成AIそのものを遠ざけるのではなく、適切に利用し、その情報を検証する能力を身につけることも、今後の情報社会を生きるために必要だからである。」

という理由が考えられます。

ここで、

主張 → なぜ? → 理由

という関係を作ります。

小論文では、この「なぜ?」を繰り返すことが重要です。

自分では当然だと思っていることでも、読み手にとって当然とは限らないからです。

⑤ 根拠・具体例――「本当にそう言えるのか」を考える

理由を考えたら、さらに、

「本当にそう言えるのか?」

と問いかけます。

ここで必要になるのが、根拠や具体例です。

たとえば、

生成AIがもっともらしい誤情報を生成する場合があること

を取り上げれば、

「生成AIを使えること」だけではなく、出力された情報が正しいかを自分で検証する能力が必要であるという議論につなげることができます。

また、問題によっては、

課題文の内容
統計資料
公的機関のデータ
社会で実際に起きている事例
書籍などから得た知識
自分自身の経験

などを根拠・具体例として利用することもできます。

ただし、具体例は「知っていることを披露するため」に入れるものではありません。

重要なのは、

「この具体例は、自分の主張や理由を説明するために本当に必要なのか」

ということです。

主張と関係のない具体例をいくら並べても、説得力のある小論文にはなりません。

⑥ 結論――議論の最後に何を導くのか

最後に結論を確認します。

結論は、単純に冒頭の主張を一字一句繰り返せばよいというものではありません。

ここまでの議論を踏まえて、

「したがって、自分は最終的に何を主張するのか」

を明確にします。

今回の例なら、

「したがって、学校教育では生成AIを単純に禁止するのではなく、その特性や限界を理解し、情報を検証しながら活用する能力を育てる教育が必要である。」

といった結論が考えられます。

これによって、

論点

主張

理由

根拠・具体例

結論

が一本の線でつながります。

実際にプロットを作ってみる

ここまでの例をプロットにすると、次のようになります。

【設問】
学校教育における生成AIの利用について、利点と問題点の双方を踏まえて論じる。

【論点】
学校教育では、生徒による生成AIの利用をどこまで認めるべきか。

【主張】
全面禁止ではなく、生徒自身による検証を前提として学習支援に利用すべきである。

【理由】
生成AIを適切に利用し、その情報を検証する能力そのものが、これからの情報社会で必要になるからである。

【根拠・具体例】
生成AIは学習を補助できる一方、誤った情報を生成することもある。そのため、回答をそのまま利用するのではなく、資料などと照合して検証する能力が必要になる。

【結論】
学校教育では生成AIを排除するのではなく、その限界を理解しながら適切に利用する力を育てるべきである。

ここまで決めてから、初めて文章を書き始めます。

こうすると、答案を書いている途中で、

「次に何を書けばよいのか分からない」

という状態になりにくくなります。

「序論・本論・結論」より先に考えるべきこと

小論文の参考書などでは、

序論

本論

結論

という構成が紹介されることがあります。

もちろん、文章全体を整理する方法として有効です。

しかし、

「最初に序論を書いて、次に本論を書いて、最後に結論を書けば小論文になる」

と考えるのは危険です。

なぜなら、「序論・本論・結論」は文章の外形を示しているだけだからです。

例えば、本論に何を書くのかが決まっていなければ、いくら「本論」という箱を用意しても中身は入りません。

その前に、

何を論点とするのか
何を主張するのか
その理由は何か
何を根拠として示すのか

を考える必要があります。

つまり、

思考の構造を作る

文章の構造にする

という順番です。

「型」に文章を押し込むのではなく、まず自分の議論を完成させ、それを読み手に伝わる文章構成へ変換することが重要です。

プロットを作ると「論理の穴」が見える

プロットには、もう一つ大きな利点があります。

それは、文章を書く前に、自分の議論のおかしなところを発見できることです。

例えば、

主張:Aを実施すべきだ

理由:Bだからだ

と考えたとき、

「でも、BだからAを実施すべきだと本当に言えるのか?」

と確認できます。

また、

主張と具体例がつながっていない

理由はあるが、それを支える根拠がない

反対意見を考えると主張が成立しない

といった問題も、文章を書く前に発見できます。

800字を書き終わってから論理の問題に気づけば、答案全体を書き直さなければならないことがあります。

しかし、プロットの段階なら、数行を書き換えるだけで済みます。

プロットは、文章を書くためだけではなく、自分の考えを検証するための道具でもあるのです。

800字なら800字の「設計」をする

プロットを作る際には、制限字数も考えます。

たとえば800字の小論文であれば、

問題提起・主張にどの程度使うか
理由の説明にどの程度使うか
具体例・根拠にどの程度使うか
反対意見を検討する必要があるか
結論をどの程度でまとめるか

をあらかじめ考えておきます。

ここで重要なのは、「必ず○○字・○○字・○○字にする」という万能の配分があるわけではないということです。

問題によって必要な説明量は変わります。

設問に複数の要求があれば、それぞれに必要な字数を割り当てる必要があります。

プロットを作ることによって、

「この内容を全部800字に収められるか」

を執筆前に確認できます。

プロットは最初から上手に作れなくてよい

初めて小論文対策をする高校生に、

「ではプロットを作ってください」

と言っても、最初から適切なものを作れるとは限りません。

むしろ、

論点が広すぎる
主張が曖昧
理由になっていない
具体例が主張とつながらない
根拠が不足している
結論が突然変わる

といった問題が出てくるのが普通です。

重要なのは、その問題を文章を書いた後ではなく、書く前の段階で発見し、修正する練習を繰り返すことです。

潜龍舎の小論文指導でも、完成した答案を添削するだけではなく、次に取り組む問題について、講師と受験生が一緒に論点・主張・理由・具体例などを検討し、プロットを作成する過程を重視しています。

小論文の力とは、完成した文章をきれいに直してもらうことで身につくものではありません。

自分自身で考え、議論を組み立て、それを文章にする力を身につけることが重要です。

小論文は「書きながら考える」のではなく「考えてから書く」

小論文を書くとき、最も避けたいのは、

問題を読む

とりあえず書き始める

書きながら次に何を書くか考える

途中で話が変わる

最後に何とかまとめる

という書き方です。

目指したいのは、

課題文・資料を読む

設問を分析する

論点を設定する

主張を決める

理由を考える

根拠・具体例を検討する

結論を決める

プロット全体を確認する

文章を書く

という順番です。

つまり、

小論文は「書きながら考える」のではなく、「考えてから書く」。

文章を書く前に、答案の中身はほぼ完成させておく。

そして、完成した思考の設計図を文章へ変換する。

この習慣を身につけることが、制限時間の中で、論理の一貫した小論文を書くための重要なポイントです。

小論文で「主張」と「根拠」をどう書くか

小論文では、自分の考えを明確にすることが重要です。

しかし、

「私は○○と考える。」

と書いただけでは、小論文として十分ではありません。

なぜなら、読み手が知りたいのは、

「あなたが何を考えているか」だけではなく、「なぜそう考えるのか」

だからです。

小論文では、自分の主張を示し、その主張がなぜ妥当だと考えられるのかを、理由や根拠によって説明する必要があります。

これが「論証する」ということです。

「意見」と「論証」は違う

たとえば、

「私は、学校での生成AIの利用に賛成である。」

と書いたとします。

これは自分の立場を示しているので「意見」にはなっています。

しかし、読み手から、

「なぜですか?」

と質問されたらどうでしょうか。

その問いに答えられなければ、まだ十分な小論文にはなっていません。

そこで、

「私は、学校での生成AIの利用に賛成である。なぜなら、これからの社会では、AIを単に使う能力だけでなく、AIが生成した情報の妥当性を自分で判断する能力も必要になるからである。」

と説明します。

これで、

主張 → 理由

という関係が生まれます。

しかし、ここでもう一度、

「本当にそう言えるのか?」

と考えてみる必要があります。

そこで、その理由を支える事実や事例などを示します。

つまり、小論文では、

私は○○と考える

なぜなら△△だからである

それは□□という根拠から説明できる

という形で、自分の考えを支えていく必要があります。

「主張」とは、論点に対する自分の答え

主張とは、簡単にいえば、設定した論点に対する自分の答えです。

たとえば、

論点:学校教育で生成AIをどこまで利用すべきか

という問いを設定したとします。

これに対して、

「学校教育では生成AIを全面的に禁止するのではなく、一定のルールのもとで学習に活用すべきである。」

と答える。

これが主張です。

良い主張には、

「自分が最終的に何を言いたいのかが一文で分かる」

という特徴があります。

逆に、

「生成AIにはメリットもあればデメリットもある。」

だけでは、事実の指摘に近く、自分が最終的にどう考えているのかが分かりません。

「生成AIについては、これから慎重に考えていく必要がある。」

という表現も同様です。

「それでは、あなた自身はどうすべきだと考えているのですか?」

という問いに答えられるところまで、自分の考えを明確にする必要があります。

主張を書いたら、必ず「なぜ?」と問いかける

主張を決めたら、潜龍舎ではその主張に対して、

「なぜ?」

と問いかけます。

たとえば、

「地域の公共交通を維持するために、行政による支援を強化すべきである。」

という主張をしたとします。

そこで、

「なぜ行政が支援する必要があるのか?」

と考えます。

たとえば、

「公共交通は、採算性だけでは維持が難しい地域であっても、自家用車を利用できない高齢者や学生などの生活を支える役割を持っているからである。」

と説明できます。

これが理由です。

この、

主張 → なぜ? → 理由

という思考を習慣にすることが重要です。

「理由」と「根拠」はどう違うのか

高校生にとって分かりにくいのが、「理由」と「根拠」の違いです。

厳密な使い分けは文脈によって異なりますが、小論文対策では次のように考えると分かりやすいでしょう。

主張
→ 自分は何を言いたいのか

理由
→ なぜそう主張するのか

根拠
→ その理由が妥当だと考えられる材料は何か

例えば、

【主張】
地方では公共交通への公的支援を強化すべきである。

【理由】
自家用車を利用できない人にとって、公共交通は日常生活を維持するために重要だからである。

【根拠】
高齢者、障害のある人、学生など、自家用車による移動が難しい人も存在し、公共交通の縮小によって通院・通学・買い物などへのアクセスが困難になる場合がある。

という関係です。

このように、

主張を理由で支え、その理由をさらに根拠によって支える

ことで、議論の説得力を高めていきます。

「みんなそう思っている」は根拠にならない

受験生の答案で注意したいのが、根拠のない一般化です。

例えば、

「現代の若者はみんなSNSに依存している。」

「高齢者はデジタル機器を使うことができない。」

「最近の子どもは本を読まなくなった。」

「外国人が増えれば文化的な摩擦が起きる。」

といった表現です。

こうしたことを根拠なしに断定することは避けるべきです。

自分の周囲でそう見えるからといって、社会全体でも同じとは限りません。

小論文では、

「本当にそう言えるのか?」

と自分自身の主張を疑ってみる姿勢が重要です。

「自分の経験」だけで社会全体を説明しない

自分自身の経験は、小論文の具体例として利用できる場合があります。

たとえば、

「私の高校では、生徒会活動で○○という取り組みを行った。その経験から……」

という形です。

自分自身が経験したことなので、具体性があります。

しかし、

「私の学校では○○だった。したがって、日本の高校生はみな○○である。」

と結論づけることはできません。

一つの経験だけから社会全体について一般化することは難しいからです。

個人的経験を使用する場合には、

「この経験から何が言えるのか」

そして、

「どこまでなら言えるのか」

を考える必要があります。

どのようなものが「根拠」になるのか

小論文では、問題に応じてさまざまなものを根拠として利用できます。

たとえば、

課題文に示された内容

問題で提示された統計・グラフ・資料

国や自治体など公的機関の統計

社会で実際に行われている制度や政策

具体的な社会事例

書籍などから得た知識

歴史的事実

自分自身の経験

などです。

ただし、重要なのは、根拠の数を増やすことではありません。

「その根拠によって、本当に自分の主張を支えることができるのか」

を考えることです。

知っているデータや事例を無理に答案へ入れても、主張との関係が説明されていなければ意味がありません。

データを示しただけでは「論証」にならない

統計やデータを使えば、自動的に説得力のある小論文になるわけでもありません。

たとえば、

「高齢化率は上昇している。したがって、地域コミュニティを活性化する必要がある。」

と書いたとします。

ここには論理の飛躍があります。

「高齢化率が上昇していること」と「地域コミュニティを活性化すべきこと」の間に、どのような関係があるのか

が説明されていないからです。

必要なのは、

データ

そのデータから何が読み取れるのか

それがどのような問題につながるのか

なぜ自分の主張を支えるのか

を説明することです。

つまり、根拠は「置くもの」ではなく「主張とつなぐもの」なのです。

「たとえば」の後には「だから何が言えるのか」まで書く

具体例についても同じことがいえます。

小論文では、

「たとえば~」

と具体例を書いた後が重要です。

具体例を紹介しただけで終わらず、

「この事例から何が分かるのか」

を説明します。

たとえば、

主張
生成AIの利用には情報を検証する力が必要である。

具体例
生成AIは、事実とは異なる内容をもっともらしく出力する場合がある。

考察
したがって、生成された回答をそのまま正しいものとして受け入れるのではなく、他の資料と照合して確認する力が必要になる。

という形です。

この最後の「この例から何が言えるのか」がなければ、具体例が答案の中で孤立してしまいます。

反対意見を考えると、自分の主張を検証できる

自分の主張が本当に妥当なのかを確認する方法の一つが、反対の立場から考えてみることです。

たとえば、

「学校教育で生成AIを積極的に活用すべきである。」

と主張したとします。

そこで、

「では、生成AIに頼りすぎて自分で考えなくなる危険はないのか?」

と反対の立場から問いかけてみます。

この問いに対して、

「たしかに、生成AIに回答そのものを作らせ、それを無批判に利用すれば、自分で考える機会を失う危険がある。そのため、利用を無条件に認めるのではなく、用途やルールを設定する必要がある。」

と検討すれば、最初の単純な主張をより精密なものにできます。

つまり、反対意見を考えることは、たんに答案を長くするためではありません。

自分の主張の弱点を発見し、より説得力のある議論にするための方法です。

「正解」を当てるのではなく、「なぜ」を説明する

小論文に取り組む受験生の中には、

「大学が期待している意見を書かなければならないのではないか」

と考える人もいます。

しかし、小論文で重要なのは、単純に「賛成」「反対」のどちらを選んだかだけではありません。

同じ問題について異なる立場を取ることは十分にあり得ます。

重要なのは、

なぜその立場を取るのか

その理由は妥当なのか

どのような根拠によって説明できるのか

反対の立場を考えても、その主張は成り立つのか

ということです。

小論文では、自分の考えそのものだけでなく、その考えに至るまでの論理を読み手に示すことが求められます。

「なぜ?」と「本当に?」を繰り返す

潜龍舎では、主張を考えたら、そのまま答案にするのではなく、

「なぜ?」

と問いかけます。

理由が出てきたら、さらに、

「本当にそう言えるのか?」

と問いかけます。

そして根拠や具体例を挙げたら、

「その根拠から、本当にこの主張を導けるのか?」

と確認します。

つまり、

主張

なぜ?

理由

本当に?

根拠・具体例

だから何が言える?

主張を論証する

という思考です。

この作業を繰り返すことで、「私はこう思います」で終わる文章から、理由と根拠によって自分の主張を支える小論文へ変わっていきます。

小論文は「意見を述べる試験」ではなく「意見を論証する試験」

小論文で大切なのは、立派な意見を思いつくことだけではありません。

「私は○○と考える」

と書いたら、必ず、

「なぜ?」

と自分に問いかけてください。

そして理由を書いたら、

「本当にそう言えるのか?」

と問いかけます。

さらに根拠や具体例を挙げたら、

「だから何が言えるのか?」

を考えます。

この繰り返しによって、

主張 → 理由 → 根拠・具体例 → 考察 → 結論

が一本の論理としてつながっていきます。

小論文は、単に自分の意見を表明する試験ではありません。

自分の主張について、「なぜそう考えるのか」を理由と根拠によって読み手に説明し、その妥当性を論証する試験です。

「私はこう思う」で終わらず、「なぜなら」そして「だから」まで書く。

それが、説得力のある小論文を書くための基本です。

小論文で具体例を使う方法

小論文では、主張や理由を書くだけでなく、それを支える具体例を適切に示すことが重要です。

たとえば、

「地域社会では高齢者の移動手段を確保する必要がある」

と主張したとします。

この主張だけでは、まだ抽象的です。

そこで、

路線バスの減便によって、通院や買い物が難しくなる高齢者がいる

といった具体的な状況を示すことで、読み手は「なぜその問題が重要なのか」を理解しやすくなります。

ただし、小論文では、具体例を入れれば自動的に説得力が増すわけではありません。

重要なのは、その具体例が自分の主張や理由と本当に結びついているかです。

具体例は「話を面白くするため」に入れるのではない

具体例の役割は、文章を華やかにしたり、自分が知っていることを披露したりすることではありません。

具体例は、自分の主張や理由をより具体的に説明し、その妥当性を読み手に理解してもらうために使うものです。

たとえば、

主張:学校教育では、生成AIを全面的に禁止するべきではない。

とした場合、

具体例:生成AIは英語学習や情報整理にも利用できる。

だけでは、まだ十分ではありません。

さらに、

このように、生成AIには学習を補助する機能があるため、使用そのものを禁止するのではなく、適切な利用方法を学ばせる方が望ましい。

と説明することで、

主張 → 具体例 → そこから言えること

がつながります。

具体例を書いたら、必ず、

「この例から何が言えるのか?」

まで考えることが重要です。

良い具体例は「主張と直接つながっている」

具体例を選ぶときには、

「この具体例は、自分の主張を説明するために本当に必要か」

と考えてください。

たとえば、

「外国人住民との共生を進めるためには、行政情報の多言語化が必要である」

と主張するとします。

この場合、

災害時に避難情報を理解できない外国人住民がいる

という具体例は、行政情報の多言語化の必要性と直接つながっています。

一方、

「私は海外旅行で外国人と会話したことがある」

という経験は、それ自体では行政情報の多言語化を支える具体例にはなりません。

具体例の良し悪しは、珍しさや華やかさではなく、主張との関連性で判断します。

具体例にはいくつかの種類がある

小論文で使える具体例は、一種類ではありません。

問題に応じて、例えば次のようなものを利用できます。

社会で実際に起きている事例

政策、制度、企業や自治体の取り組み、社会問題などです。

統計・データ

問題文で提示された資料、公的機関の統計などです。

歴史的事例

過去の制度や社会変化などを、現在の問題を考える材料として使う場合があります。

書籍や学習から得た知識

授業、探究、読書などで学んだ内容を利用することもできます。

自分自身の経験

学校生活、部活動、ボランティア、地域活動など、自分が実際に経験したことです。

どの種類の具体例を使う場合でも重要なのは、

「その例によって何を説明したいのか」

を明確にすることです。

自分の経験も使えるが、一般化には注意する

高校生の小論文では、自分自身の経験が有効な具体例になる場合もあります。

たとえば、

「私の学校では、生徒会が校則について生徒アンケートを実施し、その結果をもとに学校側と話し合った。」

という経験を、

「ルール形成に当事者が参加することの重要性」

を論じる具体例として使うことはできます。

しかし、

「私の学校ではそうだった。したがって、日本中の高校でも同じである。」

とするのは問題があります。

一つの学校、一人の経験だけから社会全体について断定することはできないからです。

自分の経験を使う場合は、

「この経験から少なくとも何が考えられるのか」

と範囲を意識して論じることが大切です。

「有名な事例」を無理に入れる必要はない

受験生の中には、

「小論文では有名な社会問題や難しい事例を書いた方が評価されるのではないか」

と考える人もいます。

しかし、よく知らない事例を無理に使うと、

事実関係を間違える
主張との関係が弱くなる
説明が不十分になる

という問題が起こります。

大切なのは、難しい事例を書くことではありません。

自分が正確に理解しており、自分の主張との関係を説明できる具体例を使うことです。

数字や統計は正確に使う

統計やデータは、主張を支える強い材料になることがあります。

ただし、覚えていない数字を推測して、

「日本人の約8割が~」

「近年、○○は2倍になっている」

などと書くのは避けるべきです。

数字を使うのであれば、基本的には正確に把握しているものを使います。

正確な数値を覚えていない場合は、無理に数字を作らず、

「増加傾向にある」

「多くの自治体で課題となっている」

など、自分が確実に言える範囲にとどめる方が安全です。

また、問題文に統計資料が提示されている場合には、それを積極的に利用できます。

その際も、数値を写すだけではなく、

「この数値から何が読み取れるのか」

まで説明することが重要です。

具体例を書いたら「だから何?」を考える

具体例を使う際に最も重要なチェック方法が、

「だから何?」

と自分に問いかけることです。

たとえば、

「ある自治体では、高齢者向けに乗合タクシーを運行している。」

という具体例を書いたとします。

そこで終わるのではなく、

「だから、この事例から何が言えるのか?」

を考えます。

たとえば、

「このような取り組みは、人口が少なく路線バスの維持が難しい地域でも、公共交通を従来とは異なる形で確保できる可能性を示している。」

とつなげます。

すると、

具体例 → 考察 → 主張

という関係が生まれます。

具体例を答案に置くだけではなく、その意味を説明することが大切です。

具体例が多ければよいわけではない

800字程度の小論文で、具体例を3つも4つも並べる必要はありません。

具体例が多すぎると、一つひとつの説明が浅くなり、答案全体が「事例紹介」のようになってしまうことがあります。

それよりも、

主張に合った具体例を1つ選び、その具体例がなぜ主張を支えるのかを丁寧に説明する

方が、説得力のある文章になる場合があります。

重要なのは、具体例の数ではなく質と使い方です。

具体例が思いつかない原因は「知識不足」のことがある

「具体例が思いつきません」

という悩みを持つ受験生は少なくありません。

この場合、文章の書き方以前に、そのテーマについて考えるための知識が不足している可能性があります。

たとえば、「地域医療について論じなさい」と言われても、地域医療がどのような問題を抱えているのかを知らなければ、具体例を挙げることは難しいでしょう。

そのため、小論文対策では答案を書く練習だけでなく、

新聞やニュースを見る
関連する書籍を読む
公的機関の資料を見る
志望学部に関係する社会問題を調べる
授業や探究で扱った内容を整理する

など、具体例の材料となる知識を蓄積することも重要です。

「具体例ノート」を作る

具体例を増やす方法として、日頃から気になった社会問題について簡単に記録しておくのも有効です。

たとえば、

テーマ:少子化

問題:地方で保育施設の維持が難しくなっている

具体例:○○という取り組み

この事例から考えられること:人口減少地域では従来と同じ公共サービスの形を維持するだけでは難しい

というように整理します。

ただし、具体例を丸暗記して、どんな問題にも同じ事例を当てはめるのはおすすめしません。

目的は「答案に使えるネタを覚えること」ではなく、社会の出来事を見たときに、それがどのような問題と関係しているのかを考える習慣を作ることです。

具体例は「主張の証拠」ではなく「論証の一部」

ここで注意したいのは、具体例を一つ挙げれば、それだけで主張が完全に証明されたことになるわけではないということです。

たとえば、

「私の友人はオンライン授業で成績が上がった。だからオンライン教育は対面教育より優れている。」

とは簡単には言えません。

一人の事例だけで、教育全体について結論を出すことはできないからです。

具体例は、自分の議論を具体化し、読み手が理解しやすくするための材料として使います。

そして、

主張

理由

具体例

その具体例の意味を考察

主張へ戻る

という形で、答案の論理の中に組み込みます。

「具体例を書いた後」が小論文では重要

小論文で具体例を使うときに、ぜひ覚えておきたいのが、

具体例そのものよりも、「その具体例から何を言えるのか」を説明することが重要

ということです。

答案を書く際には、

この具体例は何を示しているのか?

なぜこの具体例をここに置いたのか?

この具体例は自分の主張とどうつながるのか?

を確認してください。

そして、

具体例 → 考察 → 主張

というつながりを作ります。

小論文では、知っている事例をたくさん披露する必要はありません。

自分の主張に適した具体例を選び、その意味を自分自身で説明できること。

それが、具体例を効果的に使うための最も重要なポイントです。

小論文で求められる「論理的な文章」とは?

小論文では、しばしば「論理的に書きなさい」と言われます。

しかし、高校生にとって、

「論理的な文章とは、具体的にどのような文章なのか」

は分かりにくいかもしれません。

論理的な文章とは、簡単にいえば、自分の主張が、理由・根拠・具体例などによって筋道立てて説明されており、読み手が「なぜその結論になるのか」を追うことができる文章です。

単に難しい言葉を使ったり、接続詞をたくさん入れたりすれば論理的になるわけではありません。

重要なのは、文と文、段落と段落、主張と根拠の関係がきちんとつながっていることです。

「主張」と「理由」がつながっているか

たとえば、

「学校教育では生成AIを活用すべきである。なぜなら、生徒の情報活用能力を高めることができるからだ。」

という文章があったとします。

ここでは、

主張:生成AIを活用すべきである

と、

理由:情報活用能力を高められるから

がつながっています。

さらに、

「ただし、生成された情報を無批判に受け入れないよう、情報源を確認する訓練も必要である。」

と続ければ、主張に条件や留保を加えることもできます。

このように、論理的な文章では、

何を主張しているのか

なぜそう言えるのか

その理由にはどのような根拠があるのか

が明確です。

文と文の関係を意識する

論理が分かりにくい答案では、一文一文は間違っていなくても、文同士の関係が不明確なことがあります。

たとえば、

「少子化が進んでいる。地方では人口減少も深刻である。高齢者の移動手段も課題である。若者の都市流出も問題である。」

この文章では、どの文も社会問題としては理解できます。

しかし、

「だから何なのか」

「どの文が、どの文を説明しているのか」

が分かりません。

一方、

「地方では人口減少と高齢化が同時に進んでいる。その結果、公共交通の利用者が減少し、路線の維持が難しくなる地域もある。したがって、高齢者の移動手段を確保するためには、従来の路線バスだけに依存しない交通政策を検討する必要がある。」

とすれば、

状況

結果

課題

主張

という流れが見えます。

論理的な文章とは、内容を正しい順番でつなぎ、読み手が思考の流れをたどれる文章だと考えると分かりやすいでしょう。

接続詞は「論理関係を見せるための標識」

ここで重要になるのが接続詞です。

「しかし」
「したがって」
「なぜなら」
「一方で」
「たとえば」
「つまり」
「そのため」

といった接続詞は、文と文の関係を読み手に伝えるために役立ちます。

たとえば、

「なぜなら」
→ 前の主張に対する理由

「しかし」
→ 前の内容との対立・逆転

「したがって」
→ 前の内容から導かれる結論

「例えば」
→ 抽象的な説明を具体化

「つまり」
→ 前の内容を言い換えて整理

という役割があります。

つまり、接続詞は論理そのものではなく、論理関係を読み手に見えやすくするための標識です。

接続詞を入れれば論理的になるわけではない

たとえば、

「私は制服を廃止すべきだと考える。したがって、制服は高価である。」

という文章があったとします。

「したがって」という接続詞は入っていますが、

「制服を廃止すべきだ」という主張から、「制服は高価である」という事実が導かれる

わけではありません。

むしろ順番としては、

「制服は家庭にとって経済的負担になる場合がある。したがって、制服のあり方について見直す余地がある。」

などの方が論理的です。

接続詞が正しくても、その前後の内容が本当にその関係になっていなければ、文章は論理的にはなりません。

ですから、

接続詞を覚えること

よりも先に、

「前の文と次の文は、どのような関係なのか」

を考えることが重要です。

段落ごとに「役割」を持たせる

論理的な小論文では、段落にも役割があります。

例えば800字程度の小論文なら、

第1段落:問題提起・主張

第2段落:理由・背景

第3段落:根拠・具体例・考察

第4段落:結論

といった構成が考えられます。

もちろん、すべての問題で同じ型にする必要はありません。

重要なのは、各段落について、

「この段落は何のためにあるのか」

を説明できることです。

一つの段落の中で、

少子化
AI
学校教育
自分の部活動経験

と話題が次々に変わるようでは、読み手は論理を追いにくくなります。

一つの段落では一つの役割を中心にする

ことを意識すると、文章全体の構造が分かりやすくなります。

「同じ話をしているか」を確認する

小論文では、最初に出した論点から途中で離れてしまうことがあります。

たとえば、設問が、

「SNSが若者の人間関係に与える影響」

について問うているのに、途中から、

「インターネット上の犯罪を防ぐべきだ」

という話に大きく移ってしまえば、論点がズレる可能性があります。

答案を書いている途中でも、

「この段落は、自分の主張を説明するために必要か?」

「最初に設定した論点から外れていないか?」

と確認することが大切です。

論理的な文章とは、内容がつながっているだけでなく、最後まで同じ論点について一貫して論じている文章でもあります。

「飛躍」がないか確認する

論理的な文章で特に注意したいのが、論理の飛躍です。

たとえば、

「若者の読書時間は減少している。したがって、日本の教育水準は低下している。」

と書いたとします。

読書時間が減少していることだけから、日本の教育水準全体が低下しているとは言い切れません。

間に必要な説明が抜けています。

このように、

Aという事実がある

いきなりCという結論を出す

のではなく、

AからBがどう導かれ、そのBからなぜCと言えるのか

を説明する必要があります。

答案を書いたら、

「この結論の前に、説明が一段階抜けていないか」

を確認する習慣をつけるとよいでしょう。

「反対意見」を入れる場合も論理的につなぐ

小論文では、反対意見を検討すると議論が深まる場合があります。

たとえば、

「学校で生成AIを活用すべきである。」

という主張に対して、

「一方で、生成AIに頼りすぎることで、生徒が自分で考える機会を失う可能性もある。」

と反対の側面を示します。

そのうえで、

「しかし、この問題は利用そのものを禁止することで解決するのではなく、利用方法や目的を明確にすることで対応すべきである。」

と続ければ、

自分の主張

反対意見

検討

より精密な主張

という論理ができます。

反対意見は、単に「反対の考えもあります」と付け足すのではなく、自分の議論を深めるために使うことが重要です。

「だから」「なぜなら」が言えるかを確認する

自分の答案が論理的につながっているか確認する簡単な方法があります。

主張に対して、

「なぜ?」

と問いかける。

理由に対して、

「本当に?」

と問いかける。

具体例に対して、

「だから何が言える?」

と問いかける。

そして段落と段落の間で、

「この次に、なぜこの話が来るのか?」

を確認します。

これらに答えられれば、文章の論理関係はかなり明確になります。

接続詞を使いすぎないことも大切

接続詞は便利ですが、すべての文に入れる必要はありません。

たとえば、

「したがって~。また~。さらに~。しかし~。一方で~。そのため~。」

と接続詞ばかり続くと、かえって文章が不自然になることがあります。

論理関係が文章の内容そのものから明確であれば、接続詞を省略できる場合もあります。

大切なのは、

「接続詞を何個使ったか」

ではなく、

「読み手が文どうしの関係を誤解せずに読めるか」

です。

論理的な文章は「読み手に思考の過程を見せる文章」

小論文で求められる論理性とは、難しい理論を使うことでも、接続詞を大量に入れることでもありません。

自分がどのように考え、その結論に至ったのかを、読み手が順番に追えるようにすることです。

そのためには、

論点を明確にする

主張を示す

理由を説明する

根拠・具体例を示す

その意味を考察する

結論を導く

という流れを意識します。

そして、必要に応じて接続詞を使い、それぞれの内容がどのような関係にあるのかを明示します。

つまり、

論理=接続詞

ではありません。

まず論理関係があり、それを読み手に分かりやすく伝えるために接続詞を使う。

この順番が重要です。

小論文で目指すべきなのは、難解な文章ではありません。

読み手が「なぜこの主張からこの結論になるのか」を迷わず理解できる文章。

それが、小論文で求められる「論理的な文章」です。

模範解答は「読む」のではなく「分析する」

小論文対策では、模範解答を読む機会が多くあります。

しかし、ただ読んで、

「なるほど、こう書けばいいのか」

と思うだけでは、十分な学習にはなりません。

潜龍舎では、模範解答を「読むもの」ではなく、「自分の答案と比較して分析するもの」として扱います。

重要なのは、

自分の答案
VS
模範解答

という視点です。

どちらが「上手い文章か」を比べるのではありません。

なぜ模範解答はこの論点を選んだのか。
なぜこの順番で論じているのか。
自分の答案には何が足りなかったのか。
次の答案では何を改善するべきなのか。

を具体的に分析します。

模範解答を「正解」として丸暗記しない

まず注意したいのは、模範解答を唯一の「正解」だと考えないことです。

小論文では、設問によっては複数の立場や論じ方が成立することがあります。

そのため、

「模範解答と同じ意見を書かなければいけない」

ということではありません。

大切なのは、模範解答が、

どのように設問を読み、
どのような論点を設定し、
どのような主張を立て、
どのような理由や根拠で論証しているのか

を学ぶことです。

模範解答から学ぶべきなのは、表面的な文章ではなく、答案が作られるまでの「思考の構造」なのです。

① 構成を比較する

最初に比較したいのが、文章全体の構成です。

自分の答案と模範解答を並べて、

どこで問題提起しているか
どこで主張を示しているか
理由をどこで説明しているか
具体例をどこに置いているか
最後にどのように結論へつなげているか

を確認します。

たとえば、自分の答案では冒頭から具体例を書き始めているのに、模範解答では最初に論点と主張を明確にしているかもしれません。

あるいは、自分の答案では三つの話題を少しずつ扱っているのに、模範解答では一つの論点を最後まで深く掘り下げていることもあります。

ここから、

「自分は何をどの順番で書くべきだったのか」

を学ぶことができます。

② 論点を比較する

次に見るのが論点です。

同じ設問を読んでも、どこに焦点を当てるかによって答案は大きく変わります。

例えば「AIと教育」というテーマでも、

AIによる学習効率化

を論点にすることもできますし、

AIによって自分で考える機会が減る危険

を中心に論じることもできます。

模範解答を読むときには、

「この答案は、問題のどこを中心的な論点として選んだのか」

を確認します。

そして、

「自分が設定した論点より、なぜこちらの方が論じやすかったのか」

「設問との関係はどちらが明確か」

を考えます。

③ 主張を比較する

論点が決まったら、次は主張です。

自分の答案について、

何を主張しているのか一文で言えるか

を確認します。

そのうえで模範解答と比較します。

たとえば、自分の答案が、

「AIにはメリットとデメリットがあるため、慎重に利用する必要がある。」

という曖昧な主張だったとします。

一方、模範解答が、

「学校教育では生成AIを禁止するのではなく、情報を検証する力を育てることを条件として活用すべきである。」

と具体的な立場を示していれば、

「自分の答案は主張が曖昧だった」

という課題が見えてきます。

模範解答との比較によって、主張の明確さや具体性を学ぶことができます。

④ 根拠を比較する

主張だけでなく、

「なぜそう言えるのか」

をどのように説明しているかも確認します。

自分の答案では、

「大切だから」

「必要だから」

としか説明できていないところを、模範解答では課題文の内容や社会的事実を使いながら論証しているかもしれません。

ここでは、

主張と根拠がつながっているか
根拠は主張を本当に支えているか
説明が途中で飛躍していないか

を比較します。

「模範解答には自分の知らないデータが入っていた」という表面的な違いだけでなく、その根拠が答案の論理の中でどのような役割を果たしているかを見ることが重要です。

⑤ 具体例を比較する

具体例についても同様です。

模範解答では、

なぜこの具体例を選んだのか

を考えます。

良い具体例は、単に有名な事例だから使われているわけではありません。

主張や理由を具体化し、読み手がその妥当性を理解しやすくするために使われています。

自分の具体例と比べながら、

主張との関連性はあるか
説明が具体的か
その事例から何が言えるかまで書けているか

を確認しましょう。

⑥ 語彙を比較する

模範解答からは、語彙の使い方も学べます。

ただし、難しい言葉を片っ端から覚えるという意味ではありません。

たとえば、自分の答案で、

「いい影響」

「悪い問題」

「みんな」

「いろいろなこと」

と曖昧に書いているところを、模範解答では、

「社会的影響」
「負担」
「格差」
「制度」
「公共性」
「多様性」

など、意味を限定できる言葉で表現しているかもしれません。

このとき、

「この言葉を使うことで、何がより正確に表現できているのか」

を考えます。

単語を暗記するだけではなく、文脈の中でどのように使われているかを学ぶことが重要です。

⑦ 文章表現を比較する

最後に、文章表現も比較します。

たとえば、

一文が長すぎないか
主語と述語が対応しているか
同じ表現を繰り返していないか
接続詞が適切か
段落の切り方は適切か
抽象的すぎる表現になっていないか

などです。

ただし、ここでも大切なのは「模範解答っぽい文章をまねる」ことではありません。

文章表現は、自分の考えをより正確に読み手へ伝えるための手段です。

何が読みやすく、なぜ分かりやすいのかを分析して、自分の文章改善に活かします。

比較するときは「7項目」で見る

自分の答案と模範解答を比較するときは、次の7項目に分けて考えると分かりやすくなります。

① 構成
→ どのような順番で議論しているか

② 論点
→ 何を中心に論じているか

③ 主張
→ 最終的に何を言いたいのか

④ 根拠
→ なぜその主張が妥当だと説明しているか

⑤ 具体例
→ どのような材料で主張を具体化しているか

⑥ 語彙
→ どのような言葉を使って正確に表現しているか

⑦ 文章表現
→ どのように読みやすく、論理的に伝えているか

「何となく模範解答の方が上手い」で終わらせず、どこが違うのかを具体的に言語化することが重要です。

「自分ならどう直すか」まで考える

模範解答を分析して、

「なるほど」

で終わってはいけません。

最後に必ず、

「では、自分の答案をどう直せばよいのか」

まで考えます。

たとえば、

論点が広すぎた

のであれば、論点を絞る。

主張が曖昧だった

のであれば、一文で明確にする。

根拠が不足していた

のであれば、主張を支える材料を追加する。

具体例が浮いていた

のであれば、その具体例から何が言えるのかを説明する。

というように、分析を具体的な修正へつなげます。

模範解答は「次の答案を書くため」に使う

模範解答を見る目的は、答えを知ることではありません。

自分の答案の問題点を発見し、次の答案をより良くすることです。

そのため、

自分で答案を書く

添削を受ける

模範解答と比較する

違いを分析する

自分の答案の課題を言語化する

書き直す

という学習が重要になります。

潜龍舎が模範解答との比較・研究を重視しているのも、このためです。

模範解答を「研究する」

大学入試の過去問を解いた後、模範解答を読むだけなら数分で終わるかもしれません。

しかし、本当に重要なのはその後です。

なぜ、この論点なのか。

なぜ、この主張なのか。

なぜ、この具体例なのか。

なぜ、この順番なのか。

自分の答案とは、どこが違うのか。

こうした問いを一つずつ考えます。

つまり、模範解答は、

「こんな文章を書けばよい」と眺めるものではなく、「なぜこの答案が成立しているのか」を研究するための教材です。

そして、その分析によって得たものを、自分の次の答案へ反映させる。

模範解答は「読む」のではなく「分析する」。

これが、小論文を上達させるための重要な学習方法の一つです。

小論文は「書き直し」で上達する

小論文の問題を一題書いて、先生から添削を受ける。

赤字で修正された答案を見て、

「なるほど、ここを直せばよかったのか」

と確認する。

そして、次の問題へ進む――。

小論文対策で、このような勉強をしている受験生は少なくありません。

しかし、潜龍舎では、「添削を受けて終わり」にしないことを重視しています。

添削によって自分の答案の問題点を理解し、模範解答を分析したら、もう一度同じ問題について考え、自分自身の力で答案を書き直す。

この「書き直し」こそ、小論文の力を身につけるうえで非常に重要な過程です。

添削を「読んで終わり」にしない

添削された答案を見ると、

「ここは論点がズレています」

「根拠が不足しています」

「具体例と主張がつながっていません」

「この部分は論理が飛躍しています」

といった指摘が書かれていることがあります。

その説明を読めば、

「なるほど」

と思うでしょう。

しかし、

「指摘された内容を理解すること」

と、

「次に自分一人で正しく書けること」

は別です。

スポーツでも、フォームについて説明を聞いただけで、すぐに正しい動きができるようになるわけではありません。

小論文も同じです。

添削で問題点を理解したら、実際にもう一度自分で考え、文章を書き直す必要があります。

小論文上達の基本サイクル

潜龍舎では、小論文対策を次のようなサイクルとして考えます。

書く

添削を受ける

問題点を理解する

模範解答を分析する

書き直す

そして、重要なのは最後の「書き直す」です。

添削された答案を眺めるだけではなく、そこで学んだことを使って、もう一度自分自身で答案を組み立てます。

この過程によって、

「先生に指摘されれば分かる」

という段階から、

「自分で問題を発見して修正できる」

という段階へ進んでいきます。

① まず自分の力で書く

最初から模範解答を見てはいけません。

まずは、

課題文を読む
設問を分析する
論点を設定する
主張を決める
理由を考える
根拠・具体例を考える
プロットを作る
文章を書く

という作業を、自分自身で行います。

うまく書けなくても構いません。

むしろ、最初の答案には、自分の現在の課題が表れます。

課題文を読み違えているのか。
設問を理解できていないのか。
論点が広すぎるのか。
主張が曖昧なのか。
根拠が不足しているのか。
論理構成に問題があるのか。

まず自分で書くからこそ、何ができていて、何ができていないのかが分かります。

② 添削で「どこが悪いか」を確認する

次に、答案の添削を受けます。

ここで大切なのは、

「正しい文章に直してもらうこと」

だけを目的にしないことです。

本当に確認したいのは、

「なぜ、この答案では十分ではなかったのか」

です。

たとえば、

「具体例が弱い」

と指摘されたのであれば、

なぜこの具体例では弱いのか。
主張との関係がないのか。
一般化しすぎているのか。
具体性が不足しているのか。

まで考える必要があります。

たんに赤字になっている部分を修正するのではなく、問題が生じた原因を理解することが重要です。

③ 「自分の問題点」を言葉にする

添削を受けた後には、自分の課題をできるだけ具体的に言語化してみます。

たとえば、

「小論文が苦手」

では漠然としすぎています。

それよりも、

「課題文の具体例を筆者の主張だと読み違えていた」

「設問が『原因』を求めているのに、解決策ばかり書いていた」

「論点が広すぎて、一般論になっていた」

「主張は書いたが、それを支える根拠がなかった」

「具体例を書いた後、その事例から何が言えるのかを説明していなかった」

「段落同士の論理関係がつながっていなかった」

というところまで具体化します。

自分がなぜうまく書けなかったのかを、自分の言葉で説明できること。

これが非常に重要です。

④ 模範解答と自分の答案を比較する

問題点を確認したら、前章で説明したように模範解答を分析します。

ここでも、

「模範解答は上手だな」

で終わってはいけません。

自分の答案と並べて、

構成
論点
主張
根拠
具体例
語彙
文章表現

を比較します。

たとえば、

自分の答案では論点が3つに分散しているのに、模範解答では1つに絞られている。

自分は主張を最初と最後に書いただけなのに、模範解答では理由と具体例によって主張を論証している。

といった違いを発見します。

ここで重要なのは、模範解答をコピーすることではありません。

「自分の答案に何が不足していたのか」を理解するために模範解答を利用するのです。

⑤ もう一度プロットを作り直す

問題点を理解したら、すぐに文章を書き直すのではなく、まずプロットを作り直すことをおすすめします。

たとえば最初の答案が、

論点が広すぎた

のであれば、論点を絞ります。

主張が曖昧だった

のであれば、一文で言える形にします。

根拠が弱かった

のであれば、別の根拠を検討します。

具体例が主張とつながっていなかった

のであれば、具体例を変更するか、その意味についての考察を追加します。

つまり、

設問分析

論点

主張

理由

根拠・具体例

結論

をもう一度組み直します。

文章表現だけを修正するのではなく、答案の設計図そのものを改善することが重要です。

⑥ 自分の力でもう一度書く

そして、新しいプロットをもとに、もう一度答案を書きます。

ここで重要なのは、模範解答を書き写さないことです。

模範解答をそのまま覚えて再現しても、別の問題が出題されたときには対応できません。

書き直しの目的は、

「模範解答と同じ文章を書くこと」

ではなく、

「添削と分析から学んだことを使って、自分自身でより良い答案を作ること」

です。

最初の答案と書き直した答案を並べて、

論点は明確になったか
主張は具体的になったか
理由と根拠がつながったか
具体例は適切になったか
論理の飛躍はなくなったか
設問に正面から答えられているか

を確認します。

「赤字を直す」ことと「書き直す」ことは違う

ここは特に重要です。

たとえば先生から、

「この表現を○○に変更しましょう」

と指摘され、その部分だけ書き換える。

これは「修正」です。

もちろん必要な作業ではありますが、潜龍舎が重視する「書き直し」とは少し違います。

書き直しでは、

なぜ最初の答案に問題があったのか

を理解したうえで、

論点や主張、理由、根拠、具体例、構成そのものを再検討し、答案全体をもう一度作る

ことがあります。

つまり、

先生が直した文章を清書する

のではなく、

自分自身の思考をもう一度組み立て直す

のです。

同じ問題をもう一度書くからこそ分かることがある

受験生の中には、

「一度解いた問題をもう一度やるより、新しい問題をたくさん解いた方がよいのでは?」

と思う人もいるでしょう。

しかし、同じ問題を書き直すことには大きな意味があります。

最初の答案ではできなかったことが、添削・分析後にはできるようになったのかを確認できるからです。

たとえば、

最初は論点を設定できなかった

書き直しでは論点を一文で設定できた

最初は具体例を書いただけだった

書き直しでは「この事例から何が言えるのか」まで考察できた

という変化が見えます。

新しい問題ばかり解いていると、「前回の失敗を本当に克服できたのか」が分からないままになることがあります。

添削の目的は「答案を良くすること」だけではない

小論文指導において、添削された一枚の答案をきれいに完成させることが最終目的ではありません。

本番の試験会場では、講師に答案を添削してもらうことはできないからです。

受験生自身が、

課題文を読み
設問を分析し
論点を設定し
主張を決め
理由・根拠を考え
プロットを作り
制限時間内に答案を完成させる

必要があります。

だからこそ、添削の本当の目的は、

「この答案を先生に直してもらうこと」

ではなく、

「次は自分一人で、より良い答案を書けるようになること」

にあります。

「添削される人」から「自分で直せる人」へ

小論文対策の最終的な目標は、講師からたくさん赤字を入れてもらうことではありません。

むしろ、練習を重ねるにつれて、

「この主張では根拠が弱いな」

「この具体例は論点とズレているな」

「ここは論理が一段飛んでいるな」

「設問は原因を聞いているのに、解決策を書こうとしているな」

と、自分自身で気づけるようになることが重要です。

その力を育てるために、

書く

添削

問題点を理解

模範解答を分析

書き直す

というサイクルを繰り返します。

小論文は「書いた数」だけではなく「書き直した数」で上達する

小論文対策では、

「何題書きましたか?」

ということに目が向きがちです。

もちろん、一定量の演習は必要です。

しかし、例えば20題を一度ずつ書いて同じ失敗を繰り返すよりも、一つひとつの答案について、

なぜうまく書けなかったのかを考え、添削と模範解答から学び、もう一度自分で書き直す

方が、得られるものが大きい場合があります。

重要なのは、単に答案の枚数を増やすことではありません。

一つの答案から、どれだけ多くのことを学び、次の答案に活かせるか。

潜龍舎では、そのために、

書く → 添削 → 問題点を理解 → 模範解答を分析 → 書き直す

という学習サイクルを重視しています。

小論文は、書いて終わりではありません。

「なぜ書けなかったのか」を理解し、もう一度自分で考え直し、より良い答案へ作り直す。

この繰り返しによって、少しずつ「添削してもらわなければ書けない受験生」から、「自分で考え、自分で修正し、自分の力で書ける受験生」へ変わっていくことが、小論文対策の大切な目標です。

小論文対策はいつから始めるべき?

総合型選抜・学校推薦型選抜で小論文が課される場合、できるだけ早い時期から対策を始めることをおすすめします。

小論文は、文章の「型」を覚えれば短期間で書けるようになるものではありません。

これまで説明してきたように、

課題文を正確に読む読解力

設問を分析する力

適切な論点を設定する力

自分の主張を明確にする力

理由や根拠によって論証する力

適切な具体例を挙げるための知識

論理的に文章を構成する力

など、複数の力が必要になります。

さらに、

書く

添削を受ける

問題点を理解する

模範解答を分析する

書き直す

という練習を繰り返すことで、少しずつ自分一人で答案を作れるようになっていきます。

そのため、試験直前に数題書くだけではなく、一定期間をかけて継続的に練習することが重要です。

潜龍舎の合格者はどのくらい小論文対策をしていたのか

潜龍舎では、過去の合格者について小論文対策に取り組んだ回数や時間を集計しています。

2021~2023年の潜龍舎の合格者データでは、小論文対策の平均指導回数は7.77回、小論文対策に費やした時間は平均33.67時間(約34時間)でした(当塾集計)。

ただし、この数字は、

「34時間勉強すれば合格できる」

という意味ではありません。

必要な対策時間は、

現在の読解力・文章力
志望大学・学部
出題形式
試験時間・文字数
過去問の難易度
社会問題についての知識量

などによって大きく異なります。

あくまで、潜龍舎の過去の合格者が実際にどの程度の小論文対策を行っていたのかを示す一つの参考値としてお考えください。

高校1・2年生なら、まず「読む・考える」習慣から

高校1・2年生であれば、いきなり毎週小論文を書く必要はありません。

まずは、

新聞やニュースに触れる
志望分野に関係する本を読む
社会問題について調べる
「自分はどう考えるか」を言葉にする

といった習慣をつけておくことが、後の小論文対策につながります。

特に、具体例を挙げられない原因の一つは、文章力ではなく「その問題について知らないこと」にあります。

早い段階から読書や情報収集を行い、考えるための材料を増やしておくことをおすすめします。

高校3年生は志望大学の過去問を早めに確認する

高校3年生になったら、できるだけ早い段階で志望大学・学部の過去問を確認しましょう。

同じ「小論文」でも、

課題文型
資料分析型
テーマ型

など出題形式は異なり、文字数や試験時間、扱われるテーマも大学・学部によって異なります。

まず過去問を実際に一題解いてみることで、

「自分は何ができていて、何ができていないのか」

を把握できます。

そこから、

過去問分析 → 現状把握 → 必要な対策 → 演習 → 添削 → 書き直し

という形で、志望大学に合わせた対策を進めていくことが重要です。

小論文対策は「何時間やったか」だけでは決まらない

小論文対策では、単純な勉強時間だけでなく、どのような練習をしたかが重要です。

同じ問題を何度書いても、毎回同じ問題点を繰り返しているのであれば、十分な対策とはいえません。

一方で、一つの答案について、

なぜうまく書けなかったのかを分析し、模範解答と比較し、プロットを作り直し、もう一度答案を書く

というところまで取り組めば、一題から多くのことを学ぶことができます。

したがって、

「試験まであと何時間勉強すれば大丈夫か」

と考えるよりも、

「本番までに、自分一人で設問を分析し、論点を設定し、論理的な答案を制限時間内に完成させられるようになるか」

を基準に考えることが大切です。

小論文対策は、早く始めれば、それだけ練習と改善を繰り返す時間を確保できます。

試験直前に慌てて「書き方」を覚えるのではなく、時間をかけて「自分で考え、自分で書ける力」を身につけていく。

そのためにも、志望大学で小論文が課される可能性があると分かった段階で、早めに準備を始めることをおすすめします。

高校1・2年生が今からできる小論文対策

「小論文対策は、高校3年生になってから始めればよい」

と思っている高校1・2年生もいるかもしれません。

もちろん、志望大学の過去問を使って本格的に答案を書く練習をするのは、志望校・志望学部がある程度決まってからでも構いません。

しかし、小論文を書くために必要な力は、短期間ですべて身につくものではありません。

小論文では、

文章を正確に読む力
社会問題についての知識
問題を発見する力
自分の考えを言葉にする力
理由や根拠を考える力
適切な具体例を挙げる力
論理的に説明する力

などが求められます。

これらは、小論文の問題集だけを解いて身につけるものではありません。

高校1・2年生のうちから、「読む・知る・考える・調べる・言葉にする」習慣を作っておくことが、その後の本格的な小論文対策につながります。

① 本を読む――小論文を書くための「材料」を増やす

高校1・2年生にまずおすすめしたいのが、読書です。

小論文では、自分の意見を書くことが求められます。

しかし、自分の意見は何もないところから突然生まれるものではありません。

ある問題について、

どのような問題が起きているのか
なぜその問題が起きているのか
どのような立場や考え方があるのか
これまでどのような対策が行われてきたのか

といったことを知ることで、初めて自分なりに考えられるようになります。

たとえば「少子化」について、

「子どもが減っているので大変だと思う。」

だけでは、小論文として深い議論をすることは難しいでしょう。

しかし、少子化についての本を読み、

雇用
所得
結婚・出産
子育て支援
教育費
地域格差
ジェンダー
社会保障

など、さまざまな問題が関係していることを知れば、

「少子化は単純に子育て支援だけで解決できる問題なのだろうか?」

という問いを持てるようになります。

読書の目的は、答案に使う知識を丸暗記することではありません。

「自分が知らなかった問題や考え方と出会い、自分で考えるための材料を増やすこと」

が重要です。

② 志望学部に関係する本を読む

読む本に迷ったら、自分が大学で学びたい分野に関係する本から始めるのがおすすめです。

例えば、

法学部なら、憲法、人権、犯罪、司法、国際問題など。

経済・経営系なら、格差、人口減少、労働、企業、地域経済など。

教育系なら、不登校、教育格差、ICT教育、学校制度など。

医療・看護系なら、高齢化、地域医療、医療倫理、社会保障など。

国際系なら、移民・難民、多文化共生、国際協力、紛争など。

というように、大学で学びたい分野と社会問題を結びつけて読書をしていきます。

これは小論文対策になるだけではありません。

読書を通して、

「自分は大学で何を学びたいのか」

「自分は社会のどのような問題に関心があるのか」

が明確になれば、総合型選抜・学校推薦型選抜における志望理由書や面接の準備にもつながります。

③ ニュースを「知って終わり」にしない

小論文対策として、日頃からニュースに触れることも有効です。

ただし、ニュースをたくさん見れば小論文が書けるようになるわけではありません。

重要なのは、一つのニュースを見たときに、

「なぜ、この問題が起きているのだろう?」

「誰が困っているのだろう?」

「反対の立場から見たらどうだろう?」

「現在はどのような対策が行われているのだろう?」

「自分ならどう考えるだろう?」

と、一段深く考えることです。

分からないことがあれば、そのままにせず調べます。

この、

知る → 疑問を持つ → 調べる → 考える

という習慣が、小論文を書くための基礎になります。

④ 「なぜ?」を考える習慣をつける

高校1・2年生の段階では、毎週800字の小論文を書くことだけが対策ではありません。

むしろ日常生活の中で、

「なぜ?」

と考える習慣をつけてみてください。

例えば、

なぜ地方では人口が減っているのか。

なぜ食品ロスはなくならないのか。

なぜ学校には校則があるのか。

なぜSNSでは意見の対立が激しくなることがあるのか。

なぜ生成AIを学校で使うことについて意見が分かれるのか。

一つの問題について「なぜ?」と考えると、原因が一つではないことに気づきます。

さらに、

「本当にそうなのか?」

と自分の考えを疑い、

「別の立場から見たらどうなるのか?」

と考えてみます。

こうした思考習慣は、後に小論文で論点・主張・理由・根拠を考える際に役立ちます。

⑤ 自分の考えを短い文章にしてみる

いきなり800字の小論文を書く必要はありません。

例えばニュースや本を読んだ後、

「この問題について私はどう考えるか」

を100~200字程度で書いてみるだけでもよいでしょう。

その際には、

私は○○と考える。
なぜなら△△だからである。
例えば□□という問題がある。
したがって○○が必要だ。

というように、

主張 → 理由 → 具体例 → 結論

を意識します。

短い文章でも、自分の考えを理由とともに言葉にする習慣をつけることが重要です。

⑥ 「自分と反対の意見」も読む

小論文では、自分の考えだけを一方的に書けばよいわけではありません。

そのため高校1・2年生のうちから、

「自分とは違う立場の人は、なぜそう考えるのだろう?」

という視点を持つことをおすすめします。

例えば、ある政策に自分が賛成であれば、反対している人の理由も調べてみます。

すると、

自分が見落としていた問題

に気づくことがあります。

そのうえで、

「反対意見にもこの点では妥当性がある。しかし私は○○という理由から、この立場を取る」

と考えられるようになれば、議論は一段深くなります。

小論文に必要なのは、単に「自分の意見を強く言う力」ではなく、複数の立場を理解したうえで、自分の考えを論理的に説明する力です。

⑦ 学校の「探究」を小論文対策につなげる

高校で行われる探究活動も、小論文対策につながります。

探究では、

問題を発見する
問いを立てる
資料を調べる
情報を比較する
仮説を考える
自分なりの結論を出す
他者に説明する

といった活動を行います。

これは、小論文を書く際の思考過程と共通する部分が多くあります。

探究を「学校の提出物」として終わらせるのではなく、

「なぜこの問題に興味を持ったのか」

「調べる前と後で、自分の考えはどう変わったのか」

「まだ分からないことは何か」

まで考えてみてください。

こうした経験は、小論文だけでなく、志望理由書や面接にも活かすことができます。

高校1・2年生は「小論文を書く前の力」を育てる

高校1・2年生の小論文対策というと、

「今から小論文の問題集を何冊も解かなければならないのか」

と思うかもしれません。

必ずしもそうではありません。

この時期に特に大切なのは、

読む

知る

疑問を持つ

調べる

考える

自分の言葉にする

という習慣です。

この蓄積がある高校生と、受験直前になって初めて社会問題について調べ始める高校生では、本格的な小論文対策を始めたときに大きな差が生まれます。

小論文を書く力は、「書く練習」だけで作られるものではありません。

日頃からさまざまな文章を読み、社会について知り、自分で問いを立て、考え、それを言葉にする。

高校1・2年生のうちは、こうした「小論文を書くための土台」を作っておきましょう。

小論文対策には、どんな本を読めばよい?

「読書が大切なのは分かったけれど、具体的にどんな本を読めばよいのか分からない」という高校生もいるでしょう。

小論文対策では、いわゆる「小論文の書き方」の本だけでなく、志望学部に関連する入門書や、現代社会の問題について考えるための本を読むことも重要です。

高校生でも読みやすい本や、志望学部別におすすめしたい本については、別の記事でまとめています。

→ 高校生におすすめの小論文対策の本を見る(ページ更新準備中)

 

大学入試の小論文についてよくある質問

総合型選抜・学校推薦型選抜などの大学入試で小論文を受験する高校生から、よく寄せられる質問をまとめました。

小論文は何文字書けばいい?

まず、志望大学・学部の募集要項や過去問で指定されている文字数を確認してください。

「800字以内」「1,000字程度」など、大学・学部によって条件は異なります。

「○字以内」と指定されている場合、必ず上限ぎりぎりまで書かなければならないわけではありません。ただし、極端に短い答案では、設問に対して十分な論証ができていない可能性があります。

重要なのは単純な文字数ではなく、

設問に答えているか
主張が明確か
理由・根拠が示されているか
必要な具体例や考察があるか
結論まで論理的につながっているか

です。

「何文字書けば合格する」と考えるのではなく、指定された字数の中で必要な内容を過不足なく論じることを目指しましょう。

小論文に「型」はある?

基本的な構成の考え方はありますが、すべての問題に使える万能の「型」があるわけではありません。

例えば、

序論 → 本論 → 結論

という構成は文章を整理するうえで役立ちます。

しかし、小論文で本当に重要なのは、

設問分析

論点

主張

理由

根拠・具体例

結論

という思考の流れです。

設問によって、要約が必要な場合もあれば、資料分析、反対意見の検討、複数の観点からの考察などが必要な場合もあります。

「この型に当てはめれば何でも書ける」と考えるのではなく、設問が何を求めているのかを分析し、それに適した構成を考えることが重要です。

小論文は独学できる?

独学で力を伸ばすことは可能です。

過去問を解き、模範解答を分析し、自分の答案を書き直すことで、小論文の力を高めることができます。

ただし、小論文の独学が難しい理由の一つは、自分の答案の問題点を自分自身では発見しにくいことです。

たとえば、

設問からズレている
論点が広すぎる
主張と根拠がつながっていない
論理が飛躍している
具体例が適切ではない

といった問題は、書いた本人には気づきにくい場合があります。

独学する場合でも、学校の先生など第三者に答案を読んでもらい、「文章表現」だけでなく「設問分析・論点・主張・根拠・構成」まで確認してもらうと効果的です。

小論文と作文の違いは?

作文では、自分自身の経験や感想、感じたことなどを表現することが中心になる場合があります。

一方、小論文では、与えられた問いについて自分の主張を示し、その主張を理由や根拠によって論証することが重要です。

例えば、

「私はこの問題について、とても大切だと思いました。」

だけでは小論文として十分ではありません。

なぜ大切だと考えるのか。
その考えにはどのような根拠があるのか。
具体的にどのような問題があるのか。

まで説明する必要があります。

小論文では、単に「自分がどう感じたか」ではなく、「なぜそう考えるのかを読み手に説明できるか」が重要になります。

 

小論文に具体例は必要?

設問や答案の内容によって異なりますが、自分の主張や理由を具体的に説明するために、具体例が有効な場合は多くあります。

ただし、具体例を書けば自動的に評価されるわけではありません。

重要なのは、

「その具体例が、自分の主張とどのようにつながっているのか」

です。

具体例を書いたら、

「この事例から何が言えるのか?」

まで考えましょう。

小論文では、

主張 → 理由 → 具体例 → 考察 → 主張

という形で、具体例を論証の中に組み込むことが重要です。

[→「小論文で具体例を使う方法」へページ内リンク]

過去問は何年分やる?

まずは過去3~5年程度の問題を確認することをおすすめします。

ただし、「必ず5年分解けばよい」という意味ではありません。

最初に複数年分の過去問を見て、

出題形式
試験時間
文字数
課題文の長さ
資料の有無
頻出するテーマ
設問の特徴

などを分析します。

そのうえで実際に答案を書き、

書く → 添削 → 問題点を理解 → 模範解答を分析 → 書き直す

という学習を行います。

10年分を一度ずつ解くだけより、数年分について一題ずつ深く分析し、書き直しまで行う方が効果的な場合もあります。

過去問は「何年分やったか」だけでなく、一題からどれだけ学んだかを重視しましょう。

小論文対策はいつから始める?

志望大学で小論文が課されることが分かったら、できるだけ早く過去問を確認することをおすすめします。

小論文には、

読解力
設問分析
論点設定
社会問題についての知識
主張を考える力
理由・根拠を示す力
論理的な文章を書く力

など、複数の力が必要です。

そのため、試験直前に「書き方」だけを覚えるよりも、時間をかけて演習と改善を繰り返した方がよいでしょう。

高校1・2年生であれば、まずは読書やニュース、探究活動などを通して、「読む・知る・考える・調べる・言葉にする」習慣を作ることから始められます。

高校3年生であれば、志望大学の過去問を早めに確認し、現在の自分に何が不足しているのかを把握しましょう。

 

生成AIで小論文対策をしてもいい?

生成AIは、使い方を限定すれば、小論文の学習を補助する道具として利用できる場合があります。

例えば、自分で答案を書いた後に、

「この主張に反対する立場からは、どのような反論が考えられるか」

「このテーマを考えるためには、どのような論点があるか」

などを確認し、自分の考えを検討する材料にする使い方は考えられます。

一方で、問題文を入力して、

「800字の小論文を書いて」

と生成AIに答案そのものを作らせ、それを読んで終わるだけでは、受験生自身の小論文を書く力は十分に鍛えられません。

本番の試験では、自分自身で、

課題文を読み
設問を分析し
論点を設定し
主張を考え
根拠・具体例を選び
制限時間内に文章を書く

必要があるからです。

また、生成AIが示す情報には誤りが含まれる可能性があります。統計・制度・社会事例などを答案に利用する場合には、公的機関や原典など信頼できる情報源で事実確認をすることも重要です。

さらに、学校の課題や大学への提出物などで生成AIを利用する場合は、学校・大学が定めているルールを必ず確認してください。

生成AIに「代わりに考えてもらう」のではなく、自分で考えたものを検討し、自分の思考を深めるための補助として使うことが大切です。

小論文について分からないことがある場合は?

小論文が書けない原因は、一人ひとり異なります。

読解力に問題があるのか。
設問分析ができていないのか。
論点を設定できないのか。
社会問題についての知識が不足しているのか。
主張と根拠をつなげられないのか。
文章構成に問題があるのか。

単に「文章を書くのが苦手だから」とは限りません。

潜龍舎では、完成した答案の文章表現を添削するだけではなく、「なぜこの答案になったのか」という思考過程まで遡って問題点を確認することを重視しています。

小論文対策についてお困りの場合は、お気軽にご相談ください。

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小論文の書き方①「課題文型小論文」

 

小論文の書き方②「資料分析型小論文」

 

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